朝告げ鳥に餌を与えよG・終

 
七海「さて、皆が二階に上がった瞬間……それまで静かにしていた猿の人形が、突然シンバルを叩きながら『日ノ出マデ、アト五分ー!』と叫びます」

左右田「えっ、ちょっ、まじかよ! 人形の時間確認!」

七海「五時五十五分、だよ」

左右田「ひぎぃっ」

田中「おい、早くしろ、早く! Harry! Harry! Harry!」

狛枝「左右田君、朝告げ鳥を台の上に!」

左右田「……もしかしてこのまま俺が鳥を死守すれば、全員皆殺しに……」

日向「左右田から鳥を奪って台に乗せます」

左右田「殺人衝動の有効活用が!」

田中「空気を読んで左右田を羽交い締めにします」

七海「許可します」

左右田「まさかの対抗無し!」

狛枝「鳥を東に向かせて……あっ」

日向「どうした狛枝」

狛枝「……食べさせる石って、どれ?」

日向「……えっ……」

左右田「『目に眩しき生命力に溢れた石』だろ? 緑じゃねえの?」

田中「……白ではないのか?」

狛枝「えっ、白?」

日向「いや、緑じゃないのか? 俺はそう思っ」

七海「記憶喪失している日向君は黙っていようか」

日向「しゅん……」

左右田「可愛……くねえ」

田中「命そのものを表す白こそ、目に眩しき生命力に溢れた石ではないのか?」

狛枝「そうなのかな……生命力って書いてあるの、緑だけど……」

左右田「……目に眩しき生命力に溢れた『石』……ん? 白って確か『玉』って表記されてなかったか?」

田中「はっ……石じゃない!」

狛枝「ということは、つまり……」

日向「緑こそが、朝告げ鳥の餌ということか!」

七海(凄い論理だなあ)

狛枝「じゃあ朝告げ鳥を台に置いて、東に向かせて、緑の石を食べさせるよ!」

七海「ふむふむ。じゃあ朝告げ鳥は……」

日向「あ、朝告げ鳥は……」

七海「こけこっこーって鳴いたよ」

田中「鳴いた!」

七海「皆は東の窓から日が差し込み、日の出を見ることになるでしょう。すると階下から、扉が開く音が聞こえます」

日向「おっ、これはもしかしなくても」

田中「脱出フラグか!」

狛枝「と見せ掛けてデストラップ」

左右田「無いわぁ」

日向「とりあえず行かなきゃ話にならないだろ! 行くぞ野郎共!」

七海「記憶喪失」

日向「……田中ぁ……」

田中「助けを求められても……」

狛枝「降りよう降りよう」

左右田「降りよう降りよう」

日向「待って」

田中「俺様も降りる」

七海「じゃあ皆降りました。開くのは消えてしまったはずの、あの扉です。扉は開かれ、神々しい光に満ち溢れています」

狛枝「デストラップ……?」

左右田「いや、普通にゴールだろ」

日向「乗り込めー」

田中「猪突猛進こそ覇王の振る舞い! 乗り込むー」

狛枝「僕もー」

左右田「俺もー」

日向・田中・狛枝「どうぞどうぞ」

左右田「おい」

七海「? 皆中に入るんだよね?」

日向「あっはい」

七海「じゃあ……中に入ると、いつしか意識を失いそうになり、手放そうとしたその瞬間、誰かの舌打ちを聞くことになります」

日向「舌打ち?」

左右田「黒幕のか?」

狛枝「誰だったのかな黒幕、安定のニャル様?」

左右田「はいはいニャルの所為ニャルの所為」(裏声)

狛枝「はいはいニャルの所為ニャルの所為」(デスボイス)

田中「変な声を出すな!」

七海「このあと、探索者は目覚まし時計に起こされ、自室で目を覚ますこととなります。夢の中で持ち帰ったものはなく、また怪我などはないことになっています。SAN値回復は、全員生還ということで1D10与えられる……けど、今回のセッションは一発限りだから、回復も成長も無しで良いよね?」

日向「記憶喪失の儘か……」

七海「あ、うん。発狂は解除されたってことで、日向君の記憶も戻りました」

左右田「良かったな! セッション終わったけど!」

日向「うっせえ殺人鬼面」

左右田「理不尽だ」

狛枝「兎に角さ、全員生還出来て良かったよね。希望が満ち溢れているよ!」

田中「ふはははっ! この程度の試練、蚊程にも感じなかったわ!」

七海(……そうだったかな? 敢えて黙っていよう)

左右田「なあなあ七海、後日談とかもすんのか?」

七海「ううん、要らないと思うけど……遣りたいなら良いよ?」

狛枝「でも、これって所謂『夢オチ』の部類に入る話だから、後日談とかは難しいよね」

左右田「確かにそうだな。変な夢見ちまったなあくらいにしか思わねえだろうし」

日向「でも俺達、同じ夢を見たって話になるよな……知り合いだし、今日変な夢見たって話題が挙がるだろうなあ」

田中「そしてホラーエンドか……」

狛枝「クトゥルフらしい終わり方だね……きぼ……絶望的なオチだよ……!」

左右田「死ななかっただけ有り難い有り難い」

日向「左右田、死に掛けてたからな」

狛枝「そういえば左右田君、槍に貫かれたね……あっ、僕と槍仲間じゃないか! やったね凪ちゃん、仲間が増えたよ!」

左右田「グングニル逝っとくか?」

狛枝「No Thank you」

日向(槍仲間……?)

七海「狛枝君、左右田君。それ以上の暴走は止めて貰おうか」

狛枝・左右田「うっす」

田中(よく判らん……)




――お片付け――




七海「さて、これにてセッションを終了します。お疲れ様でした」

日向「お疲れ様」

狛枝「お疲れ様」

田中「ご苦労!」

左右田「お疲れ」

七海「皆、付き合ってくれて有り難うね。面白かったよ」

日向「リアル狂人が二人も居たけど、本当に楽しかったか? 無理してないか?」

狛枝「日向君、自虐は止めなよ」

左右田「田中、お前のこと言われてんぞ」

田中「えっ」

日向「お前等だよ白髪ピンク」

狛枝「何そのコンビ名」

左右田「これは酷い」

田中「……ふっ。なかなか愉快な遊戯であったぞ、虚ろなる世界の女神よ」

七海「そう言って貰えると嬉しいな」

日向「田中、七海は女神じゃない。天使だ。可愛い可愛い天使だ。ほら、背中に羽が」

七海「生えてないよ?」

狛枝「日向君、幻覚でも見えてるのかな」

左右田「草餅の摂り過ぎだな……可哀想に……」

日向「おい其処、ナチュラルに人を貶すな」

田中「代わりにこの、桜の精に祝福されし甘味を」

日向「ヤメロォッ! 桜餅ヲ俺ニ近付ケルナァッ!」

七海「桜餅美味しいのに。日向君が食べないなら私が貰うよ」

田中「良かろう、呉れてやる……この力を……!」

七海「有り難うね。もぐもぐ」

日向「桜餅になりたい……」

狛枝「駄目だこの日向君……早く覚醒させないと……」

左右田「諦めろ、この世界線じゃ無理だ……」

田中「世界線、だと? 貴様等もしや、平行世界からやって来た『狛枝凪斗』と『左右田和一』なのか! ふっ、納得したぞ。貴様等の不可思議な言動の意味が! つまり貴様等は」

狛枝・左右田「禁則事項です」

田中「禁則事項なら仕方無いな」

日向「納得するのかよ!」

七海「ところでさ。謎の伏線を張りまくっているのは良いけど、回収する気はあるのかな?」

狛枝「無いね」

左右田「無えな」

七海「まさに糞ゲー……! わくわくするね」

田中「何処に気分が高揚する要素が……」

日向「七海だから仕方無い」

狛枝「という訳で、伏線擬きを何も回収せずに僕は逃げるね」

左右田「メカニックはクールに去るぜ」

日向「逃げるなよ! 後片付け!」

七海「すやぁ……」

日向「あんっ、七海寝ちゃった……」

田中「……案ずるな特異点よ。俺様が手伝おう」

日向「た、田中ぁ……有り難うな」






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