永久の契り




いつの頃だったかは覚えていない
それでも確かに約束をした


共にあろうと

その柔らかな毛並みも、燃えるような紅の瞳も、
主のためのその体すら、夜になれば俺のもので、
同じく俺はそれのものだと

星々と月明かり下で交えた指の温もりは、
今でも俺の胸を焦がしている






「ふむ…今日もどろっぷしなかったな」
「そう落ち込むな三日月、驚きは後にとって置けば倍になるぜ?」
「そうさな、それは別にお主の様に驚きは求めては居らぬがな」



墨俣への出陣はこれで何度目だろうか。
繰り返される主からの出陣命令に殆どの刀剣達が疲労の色を濃くしてゆくが、俺には感謝しかなかった。

小狐丸は此処に居る。
何の根拠も無いのだが、呼ばれてるような気がする。
そんな俺の言葉を信じて小狐丸保護の為に出陣の命を下してくれる主に頭が上がらない。



「それにしても、君は元気だな」
「ん?そうか?」
「あの蛍丸だって疲れたって言っていたからな」
「あの子は強いからな、どうしたって主は頼りたくなるからだろう」

「それもそうだが、君だって蛍丸と同じかそれ以上出陣しているだろう」
「なに皆が強いからな、爺はのんびり出来るのだ」
「さっきから誉独占してる君が言う言葉じゃないだろう」
「はっはっは、爺を褒めてくれるか、いや嬉しいな」

「ほんと食えない爺さんだな」
「爺さんはお互い様であろう」
「俺は君より幾分か若いさ」

話をしながら本丸へと帰る。
疲労の色を隠せない刀剣達や本当は疲れているにも関わらず俺を気遣って話してくる鶴丸。
申し訳なさを覚える。
地面から浮き出た木の根が道をさえぎるのに気付いた鶴丸がそっと手を差し出した。



「狐の旦那様じゃないのはご不満かい?」
「…いや、あいすまぬ」



差し出された手を取り、木の根を跨いだ。
俺よりも少し華奢な鶴丸の手。
小狐丸の手は確かあんな手だったなと、思い返すだけでも胸が熱くなる。
最後に話したのはいつだったか。
三条の家を出た後は一度も逢えていない。
『歴史修正主義者』に対抗すべく刀剣より生み出された付喪神『刀剣男士』の中には小狐丸の名も刻まれていたのだから、アヤツも此方に来ている筈なのだ。
握った鶴丸の手に無意識に力を入れていたのか、苦笑いを向けられる。



「なに、彼のことだ、もしかしたら化けてもう本丸に来ているかも知れないぜ」
「お主ではないのだ、それはないだろう」
「流石の俺でも化けられないさ」
「驚き好きのお主は何をしでかすか分からん」
「しでかすなんて人聞きの悪い、俺は他の奴のためにだな…」
「『予想し得る出来事だけじゃあ、心が先に死んでいく』…だったか?」

「驚いた、君がそんなにしっかり覚えていてくれていたとはな」



ははっと楽しそうに笑う鶴丸に自然と頬が緩む。
鶴丸は昔からそうだ、三条の家に出入りしていた幼き日の鶴丸もよく笑っていた。
何度鶴の笑顔に助けられたことか。
先を行く部隊の者達に声を掛けられ応える鶴丸の手に引かれて本丸へと急いだ。
もしかしたら居なくなった後で小狐丸が墨俣に姿を見せるのではないかと後ろ髪を引かれつつそれを振り払って前を見据える。
これ以上他の者に迷惑をかけてはいけない。
そう言い聞かせた。


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