赤ずきん




刀剣男士童話劇場

山姥切国広主演、『赤ずきん』




昔々あるところにたいそう可愛らしい男の子がおりました
男の子はとても優しく素直な…



「…俺が写しだからこんなことをさせられるのか」



素直な心の持ち主でしたが、少しひねくれてもおりました

男の子は山姥切国広と名付けられていましたが、お祖母さんに作ってもらった赤い頭巾をいつも被っていて
周囲の人間からは赤ずきんと呼ばれておりました



「赤ずきん、赤ずきんや」
「…燭台切、アンタのりのりだな」
「ん?あぁ、まぁね、どうせ何を言っても配役は変わらないだろうから」



苦笑い気味の彼が赤ずきんのお母さん
しっかり者で優しくて、お料理上手という、理想のお母さんです
ただ『カッコイイ』に固執しすぎているところが残念な人



「で、俺に何か用か?」

「そうそう、君の大好きなお婆様が風邪をひいちゃったらしくてね、この葡萄酒と僕が作ったお菓子とパンを持っていってあげて欲しいんだ」

「…」
「どうしたの?」
「ばあさんの役誰だ?」
「僕も知らないけど兎に角宜しくね、赤ずきん」

「…分かった」
「知らない人に着いていったり、寄り道しちゃダメだよ?」

「そんなこと言われなくてもしない」
「あとは走ったらダメだからね?転んだりしたら…」

「アンタは俺を何だと思ってるんだ、写しの俺には届け物も出来ないとでも言いたいのか?」

「いや、そういう訳じゃないんだけど…じゃあはい、指切りね」



差し出された指を仕方なく絡める赤ずきん
もう少し嬉しそうにしてくれた方が絵的には良いのですが、
赤ずきんはこういう子なので仕方がありません



「…さっきからこのナレーションしてる奴がかんにさわるのは俺だけか?」
「あははっ、まぁ仕方ないよ、これも主の命だしね」



とにもかくにも出発です
お祖母さんの家は森の奥深く
そこには狂暴な狼も現れると言います



「そんなもの斬ればいいだろ」



勇敢な赤ずきんではありますが、狼に逢わない事にこしたことはありません
半ば強引に持たされた葡萄酒とお菓子をバスケットに入れて森へと足を進めて行きます

木々の隙間から差し込む日差しに瞳を細めつつ、
朝の澄んだ空気を胸いっぱいに吸いながらお祖母さんの元へと向かう赤ずきん

ふと、道の脇から雅な狼が現れました



「可愛い可愛い、山姥切の。朝からお出掛けか?」
「三日月、俺は今赤ずきんだ」
「はっはっは、それは奇遇だな俺は今狼をやっておるぞ」
「…その耳と尻尾、意外と似合ってるな」
「惚れ直したか?」
「ふん」

「して、赤ずきんや…これから何処に向かうのだ?」
「ばあさんの所だ。病にふせってるらしいからな、この葡萄酒と菓子を届けるように言われた」



現れた狼は話していると何やら穏やかな感じがします
狼は狼でも彼は優しい狼だと思った赤ずきんはお見舞いに行く途中だと教えてやりました
一方の狼はというと、悪行が広まってしまったせいか少してでも狼の気配を感じると動物や人々が逃げてしまい、
ここ数日何も食べていません
お腹ペコペコな狼は赤ずきんを見て柔らかそうなその肌に舌舐めずりをしていました



「…柔らかそうな肌、か…確かに山姥切のは何処もかしこも柔らかいが固く締め付けてくる場所もあるぞ?」

「…何言ってるんだアンタは」

「赤ずきん、おばあさんの家は何処にあるのだ?」
「この道を真っ直ぐ行った先だ」

「ほう、そうなのか。見舞いに行くのなら花を持っていってやったらどうだ?」

「花?」
「あぁ、誰がばあさんか知らぬがきっと喜ぶだろうこの先に花畑があったぞ」

「…花か、分かった、摘んで持っていってやるか」



指を指した先に視線を向けて親切に教えてくれた狼に赤ずきんはお礼を言いました



「…」



お礼を言いました



「…」
「ほれ山姥切の、礼を言うそうだぞ?」
「…ありが、と、う」
「っ…!!なに、大した事ではない」



頬を染めながら礼を言う赤ずきんに何やら動揺をする狼
そんな彼を置いて赤ずきんは教えられた方へと足を進めます
しばらく歩くと広がった視界には色とりどりの花々が咲き乱れておりました



「…これだけの花、どうやって用意したんだ?」



綺麗な花をそっと手に摘み取った赤ずきんは嬉しそうに微笑んでおりました

その頃、狼はというと花畑へと向かった赤ずきんの後ろ姿を見送りしめしめと思っておりました
赤ずきんが寄り道している内に先回りしてお祖母さんを食べてしまおう
そしてその後で若い肉を頂こうとお祖母さんの家へと向かいます



「っ…あの顔は、反則であろうっ…!」



家へと向かいます



「まさか山姥切のがあんな愛らしい表情をっ…あれでは他の狼に食べられてしまうではないか!」



狼さんさっさとお祖母さんの家へ向かってください




「ん?あぁ、すまぬ…先回り、だったな」



ふぅと小さく息をついた狼
その後で怪しげな笑みを浮かべた事を赤ずきんは知るよしもありませんでした




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