赤ずきん




「…このくらいでいいか」



一面に咲く花々で花束を作った赤ずきん
ふと空を見るともう太陽が高い位置まで昇っています
気づかない内に熱中してしまったようでした
寄り道をしないようにとお母さんに言われたことを今更ながら思い出した赤ずきんは急いで来た道を戻って行きます
先程出逢った場所にはもう狼は居なく、赤ずきんも早足でお祖母さんの家へと向かうことにしました

森を真っ直ぐに歩いてゆきます
暫くすると赤茶色のレンガの家が見えてきました
お祖母さんの家です
頭巾を被り直し、身なりを整えてから赤ずきんはその小さな手でノックしました



「…小さくないけどな。ばあさん、居るか?赤ずきんだ」
「あぁ、赤ずきんか…お入り」



お祖母さんの声がします
いつもとは違うその声に赤ずきんは首を傾げながらも入りました
中に入ると緩やかな山が出来ている布団が目に入りました
お祖母さんは顔まで布団に入り込んでいます
そんなに具合が悪いのかと心配になった赤ずきんはそっとお祖母さんのそばへと寄りました



「ばあさん、燭台切に持たされた葡萄酒と菓子だ、あと花を摘んできた」

「あぁ、すまぬな…赤ずきん」



ふと布団に潜っているお祖母さんがいつもと違う事に気づいた赤ずきん
大きな耳をそっと指先で撫でるとピクリと動きました



「…ばあさん大きな耳だな」
「うむ、これは主の凛とした声がよく聞こえる様にだ」
「…大きな目」
「うむ、お主の愛らしい姿がよく見える様にだ」

「…でも、唇もいつもとは…」

「うむ…これは赤ずきん、お主を食べるためだ」



ガバッと布団から勢いよく出てきた狼
赤ずきんの細い体を押さえ込み、頭からパクリと…



「ふふ、やっと触れられたな、山姥切の」
「…三日月?」
「ん?」
「俺を食べるんじゃ無いのか?」
「む、だが…俺は人を食べたりなどは…」
「…確かにな」
「あ、いや…そうだな食べるとするか」
「は?」



その体を勢いよくベッドに押し付けた狼
瞳を丸くさせる赤ずきんの柔らかな体を堪能する様に服の上からなでました
狼の行動で次に何をされるのか分かったらしい赤ずきんはバタバタと足を動かして抵抗をしめします
が、相手は自分よりも大きな体の狼敵うはずもありません



「みっ、三日月!よせ!これは子供向けの…!」
「なに、この様なものを読みにくるのは童等ではないから安心しろ」
「やめっ!こんなの赤ずきんじゃっ!」
「先程からなれーしょん等というものをしている者も止めてこんしな」



赤ずきんの抵抗も虚しく、あれよあれよと狼に流されてなゆきます
そんはな中に、二人が事に及ぼうとしているベッドの下、蠢く影がありました
真っ白い肌に髪、金色の瞳
この家の主、赤ずきんのお祖母さんです
狼によって体を縄で縛り付けられた挙げ句口元を塞がれておりました



「三日月っ!ばあさんはどこに!」
「ん?知らぬな、俺が来たときにはもぬけの殻だったぞ?」
「…え、ばあさん元気になってたのか?」
「うむ、きっと何処かに散歩でも行っているに違いない」

「んっ…!うぅ!!」

「…、今、何か声しなかったか?」
「はっはっは、なに、その辺で鶴が鳴いているのではないか?」

「鶴?あっ!ちょっ!何処触って…!」

「苦しゅうない、ちこうよれ、山姥切の」
「っ!」




静かに燃える三日月を宿す瞳
ペロリと薄い唇を舐める妖艶な狼の姿が赤ずきんの瞳を捉えて離しませんでした







おしまい



......

(やっ!離せ!)

(はっはっは、嫌よ嫌よもなんとやらだな)

(んんぅー!((まさか赤ずきんで縛られるとは驚きだぜっ)))

赤ずきん

(違う意味で食べられてしまいましたとさ)


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