卒業と入学




春、それは出逢いと別れの季節
親しい友との別れに涙して
新しい出逢いにドキドキする

高校登校初日の今日、僕はもうひとつ卒業しようと思うのです





鏡に映った自分を真っ直ぐに見つめ、髪を整える
我ながらそこそこ可愛いと思う
鞄を持って、そろそろだろうと時計に目をやると、待ち合わせピッタリに家のチャイムが鳴った

ピンポーンと響く音に返事をしながら玄関へ向かう
姉さんの言葉に背中を向けたまま返事をした僕は勢いよくドアを開けた



「おはよう、総司」
「うんっ、おはよう、一君っ!」



パリッとした真新しい制服を身に纏う一君
どんな時でもカッコイイ僕の自慢の幼馴染みだ
一君の家は公園を挟んですぐ隣
毎朝僕を迎えに来てくれる
春から通う高校も同じで、これからも毎日顔を合わせる事になるだろう

同い年なのに僕より断然しっかり者で、お兄ちゃんみたいな存在だ



「忘れ物、していないか?」
「入学式なんだから、忘れる物なんてないと思うけど?」
「筆記用具は必須であろう」
「なかったら一君が貸してくれるでしょっ」
「クラスまで同じとは限らん」

「一緒になるよ、しかも隣の席。僕お願いしてきたもんっ」
「お願い?誰にだ?」

「神様っ!」



僕の言葉にふっと笑う一君
玄関から道端へ続く階段をタッタと軽快に降りて、一君の前で両足着々する
ピッと両手を上げて決める僕を見た一君は、苦笑いしながらも拍手をくれた
そして、一君の前でゆっくり一回転する
正面に戻った時、恐る恐る一君を見つめて



「…どう?」
「似合うと思う」
「本当に?」
「嘘をついてどうする」
「社交辞令…とかさ」
「アンタ相手にそんなもの不要であろう」



本当によく似合う
優しい笑みを浮かべる一君があまりにも綺麗で、かっこよくて
僕は思わず俯いた
制服だけでこうも印象が変わるものだろうか
中学までの学ランではなく、ブレザーに身を包む一君はなんだか大人っぽく見える
そんな僕の行動を不思議に思ったのか綺麗な顔が覗き込んできて



「総司?」
「えっ、やっ…あっ、何でもないっ!」
「だが、少し顔が赤いぞ」
「そんなことより、ほらっ…そろそろ行かないと遅刻しちゃうよっ!」
「…あぁ、そうだな」



まだ少し不思議そうにしながらも頷いてくれた一君と一緒に学校へと歩き出す
地元の高校だから、きっと知っている顔がけっこう居るだろう
楽しみではあるものの、それ以上に不安がある

これだけカッコイイんだ、きっと一君に言い寄ってくる子は沢山居る
同級生だけじゃなく先輩達にだって目をつけられるだろう
そして、一君は優しいから皆図に乗る
そうなる前に、なんてかしなくちゃいけない

中学では幼馴染みの特権を使ってずっと一君と一緒に居た
そのせいか僕と一君が付き合ってるという噂が流れた位だ
だけど、これからはそうもいかない
バイトを始めたりするかもしれないから、『ずっと一緒』なんて無理なんだ

幼馴染みといい立ち位置を羨ましいと良く言われたけど、
こうなってみると凄く邪魔なモノだ
兄妹的な枠を越えるのは容易じゃない



「総司、さっきから何を難しい顔をしているのだ?」
「ん゛ー…」
「総司?」
「ん?あ、何…一君?」
「はぁ…アンタ、そんなんで大丈夫か?」
「え?」

「一度考え事を始めたら自分の世界に入り込んでしまうであろう?」



心配そうな表情から直ぐに言いたい事が伝わってきた
要は人の話を聞かない僕の成績が心配らしい
でもそれは、家族が心配する事であって一君がする事じゃない

やっぱり僕を妹扱いしてる
ムッとしながら一君を見つめると、スネて居るのだと思われたのか、
ポンポンと優しく撫でられた

あぁ、もうっ!
そうじゃないんだってばっ!





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