織姫の我儘♀




雨は嫌い
君と逢えないから
神様はもっと嫌い
僕達を離れ離れにしたから




皆なんで七月七日にお願い事をするんだろう
短冊に本当にどうでもいいお願いを書いて
それなら僕達は一体誰にお願いすれば良いんだろう
神様すらもうとう叶えてくれる気がない
ただ大好きな人に逢いたいって
ちっぽけな願いを



「また雨…か」



耳に届いた小さな雨音に織物をしていた手を止めてボンヤリと外を眺める
最初はポツリポツリだった雨足も時間が経つに連れて強くなり始め、ついには滝の様な雨に変わっていった

明日は約束の日だけどここ数日間はずっとこんな天気で、明日だってそうに決まってる
もうずっとそうなんだから
青い星で僕達の事は何とも思ってない癖に自分達の願いは数えきれない程掲げてくる人達には良い気味だと思うけど、
今年もまた逢えないのだと思うと泣きたくなった

叶えてくれる気がないのなら最初から約束なんてして欲しく無かった
その方がずっとずっと楽だ
もう何十年、何百年待っているんだろう



「…逢いたいよ」



逢えないのならこのまま消えてしまいたい
人(星)が消える所は何度か見て来た
それは本当に突然でシュッとなんでもない様に消える
こんなに呆気ないモノなのかとおもえる位
青い星の人達の中には死んだらまた生まれ変わると考えている人達が居るらしいけど



「僕達は消えたら生まれ変われるのかな?」



川の向こうに居るはずの彼に聞く様に呟く
でも雨はまるで神様が僕の問いを否定するかの様に強くなっていった
本当に嫌な人だ
こんな分かりやすい様に否定しなくたって良いのに
確かに、確かに最初は僕達が悪かった
大好きな人と一緒に居るのが幸せでちょっとの時間でも離れたくなくて、お仕事をサボった
でも、こうしてちゃんとお仕事をする様になっても逢わせてくれないなんて酷すぎる

僕を監視するかの様にウロウロ周りを歩き回る人(星)も意地悪な神様も
みんなみんな居なくなってしまえば良いのに
そしたらすぐにでも、無茶をしてでも河を渡って逢いに行くのに

強く打ち付ける様な雨が耳障りだ
ずっと我慢してきたんだ
そろそろ限界
僕達を引き離した神様や周りの人(星)達に分からせてやる
そっちがいつまでも逢わせてくれないのなら僕にだって考えがある



「もう辞めた、織物なんて死ぬまでしない。皆困ればいいんだよ」



周りにいた人達(星)に聞こえる様にハッキリとそう言って立ち上がる
引き止める言葉なんか振り払って部屋に戻った



「神様、明日逢わせてくれないのなら僕は本当に死ぬまで織らないから。本当に本気だから」



多分何処かで聞いて居るだろう神様に宣言して布団に潜り込む

所謂ふて寝というやつだ
多分こんな姿を見たら彼は呆れるだろうけど、もう僕は本当に限界なんだよ
駄々をこねる子供見たいだって分かってても
君に逢えない毎日はもう嫌なんだ



「ただ、逢いたいだけなんだ」










翌日、七月七日








僕のふて寝作戦は上手くいったのか約束の日は初めて晴れた







こんな事ならもっと早くから駄々をこねれば良かったと思いながら天の川まで駆けて行く
一年に一度しか近づく事も許されない所
何十年、何百年通った場所なのに周りの景色が凄くキラキラして見えて天の川までが凄く遠く感じた

もうすぐ、もうすぐ君に逢える
何から話そうか
とりあえず昨日の事からかな?
離れ離れになってから初めて逢える今にドキドキ、ワクワクして仕方が無かった

息を切らしながら走り続けるとやっと川にかかる橋が見えてきて
その真ん中に立つ僕の大好きな人の姿が見えた




「っ、はじめくーん!!」



思わず名前を呼びながら手を降ると彼は僕に気づいてくれたらしくて、軽く手を振り替えしながら笑って居た



最後に見た時と変わらない
優しい笑顔だった







......

(一君っ、あのね、僕昨日ふて寝したの!だから晴れたんだよ!)

(は?アンタ何を言ってるんだ?)






織姫の我儘

(これ位の我儘、許されるでしょ?)

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