恋人は人気者♀




髪よし、顔よし、服よし
身だしなみを整えて時計に目をやると長い針はあと少しでてっぺんで、せわしない秒針も同じ場所を目指し坂を駆け上がっていた
慌ててテレビの前に戻り正座する

3、2…1



『どうしたら君に伝わるのかな、僕のこの気持ち』



風に揺れる制服、足元に落ちているスクークールバック
固まるヒロインを男は強く握りしめなおす
辛そうに眉を寄せる姿に胸が軋んだ
夕陽に照らされた男の横顔
その唇が動き出そうとした時…

プツリと画面が真っ暗になった



「なっ!」
「…朝から何見てるのさ」



ハッとして振り返ると髪をあちこちハネさせだぼっとしたスエットに身に纏った総司が複雑そうな顔をして立っていたその右手にはしっかりとリモコンが握られていて、やはり犯人は総司だったかと思いながら駆け寄ってリモコンを奪いにかかる

でもそれをいとも簡単によけて見せた総司は俺が届かない様、右手を上に挙げて笑った



「何ってアンタが準主役のドラマをっ」
「録画してるんだから見なくていいじゃない」
「リアルタイムで見た上で録画を見直す、それが醍醐味なのだ」

「なんか一君ヲタクみたい」
「俺は総司ヲタクだ、それのなにが悪い」
「うわっ、シレッとそういう事言わないでよ、一君気持ち悪い」



引いた様な言葉と表情
でもそんなのが本当ではない事位俺には分かる
そらされた視線、ほんの少しだけ染まった頬
照れているのだろう?
不器用なアンタが愛おしくてしょうがない
真っ直ぐに見つめると総司は一度息を詰めてからギュッと抱きついてきた



「あーもう、その顔反則だよ一君」
「総司、俺にもさっきのセリフ、言ってくれないか?」
「無理、君には言えない」
「何故だ?」

「思ってもいないあんな薄っぺらい言葉、一君には言いたくない。それに、一君には僕の気持ち伝わってるでしょう?」



甘える様に胸に顔を埋める総司
細く柔らかい髪を撫でてやる
こんな子供の様な姿は俺にしか見せないモノだと知っているからダメだと分かっていてもつい甘やかしてしまいたくなるんだ




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