夢は願望の現れ




「総司…総司っ」
「ん…っ、あ、れ?」


辺りが暗闇に包まれ日中は賑やかだった屯所も寝静まっていた頃
勿論それは僕も例外ではなく、布団の中、深い眠りに落ちていた
が、ふと誰かが僕を呼ぶ声がする
聞きなれたその声は割と近くからのもので、ゆっくりと瞼を開き体を起こしてみればすぐ傍に一君が座っていた

「どうしたの?こんな遅くに…」
「すまん。寝れなくてな」
「寝れないって、何かあったの?」
「いや…大した事ではないのだが」
「寝てる人間起こしといて大したことないは酷くない?」
「…」
「なに?」
「変な夢を見た見てだな…」
「…うん」
「その…」
「怖くて寝れなくなった?」
「っ!」

俯きながら言葉を繋げずにいた一君に助け舟を出してあげるとカァと顔を赤く染めながらもコクンと頷いた
それが可笑しくて思わず笑いそうになったけど
此処で笑ったら一君帰っちゃうよね
一君から言って来るなんて珍しいし…

「じゃあ、一緒に寝ようか」
「…あぁ」

掛け布団を捲くって一君が入ってこれる場所をつくってあげるとそう短く返事をしてするりと布団の中に入ってきた
薄っぺらい体を抱き寄せて顔を寄せれば一君の匂いがして突然の訪問者の驚きで忘れていた睡魔がまた襲いかかってくる

「…総司、もう、寝るのか?」
「んー、眠い」
「…そうか」
「…寝て欲しくない?」
「…あぁ」

ホント一君が素直だなんて珍しい
相当な悪夢でも見たんだろうな
例えば…土方さんが禿げる夢とか?
土方さん信者の一君ならありうる
相当な悪夢だよねそりゃ

「っ、ぷっ…」
「総司?」
「いや、なんでもっ、なっ…ふふっ」

想像したらもう笑いを抑えることなんて出来なくて突然笑い出した僕に一君は不思議そうな顔をした
でも、だとしたら
夢にまで土方さんが出てきたんだとしたら
僕としては面白くないんだけどなぁ

「ねぇ一君、どんな怖い夢みたの?」
「…笑わんか?」
「うん、笑わない」
「…あんたさっき笑っていただろう。本当に笑わんか?」
「笑わないよ」

「…あんたが俺には飽きたと言って、他の男を抱く夢を見た…」



気まずそうに視線を逸らしながらポツリと呟く様に言った言葉は、僕からしたら簡単に受け流す事なんか出来なかった
え、それってさ一君…

「僕に…捨てられちゃう夢見て怖くなったの?」
「…悪いか」
「いや、悪いって言うかその…」
「俺にはあんただけだ」
「僕にも一君だけだよ」
「あんたが本当に俺に飽きてしまったらと思ったら…」
「飽きないよ。一君可愛いし、一君以外を抱くなんて僕から願い下げだよ」

「総司…」
「ん?」
「抱いてくれ」
「…は?」

思わぬお誘いに間の抜けた返事をする僕をそっちのけで僕の体の上に跨る一君
乱れた寝巻きから見える鎖骨があまりにも眩しくて直視出来なかった
胸元に擦り寄りながら唇を重ねる
自らの帯を解く姿にこれ以上されたら我慢出来ないと欲望を抑えながら腕を押さえ込んだ

「…総司、あんたが欲しい」

哀しそうに眉を寄せる一君の姿が痛々しくて、欲情的で
僕はその後大した抵抗も出来ないまま一君が望むように満足出来るまでその身体を何度も貫いた


何度目か分からない欲をお互いに吐き出した頃
汗ばんだ身体を抱き合って疲れからか閉じかけた瞼でほんの少し明るくなっているのに気がついた


......
(って夢みたんだけど)

(…知らん)

(欲求不満なのかな、僕)

((俺もあんたに襲われる夢を見た等、口が裂けても言えんな))





夢は願望の現れ

(まさかの夢オチ)

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