探し物は何ですか
俺の携帯が震えだし、開いてみると一通のメールが届いていた。
[mail]
from:ナマエ
sub:見つからん
―――――――――――
私の部屋のエアコンのリ
モコンどこにあるか知ら
ない?
-end-
「知るか!」
ナマエからのメールを読み、画面に向かってすぐにツッコむ。そしたらそれに反応したかのように、今度はナマエからの電話が掛かってきた。
『あっ、もしもし赤也?ねぇ、私の部屋のエアコンのリモコンどこにあるか知らない?』
「知らねえよ!ちゃんと探せバカ」
どこいったのかな〜。とぶつぶつ言うナマエの独り言と、ごそごそと聞こえてくる物音が俺の耳元で騒ぐ。正直切ろうかと悩んだが、一応ナマエと電話している事には代わりないからな…。切るに切れないんだよこれが。参ったなー。これが惚れた弱みってやつか?必死にリモコンに問いかけているナマエが微笑ましく思える。
『ねぇ赤也、なんかおまじないとか知らない?』
「おまじない?……あぁ、確かハサミの刃を上にして、高い所に置くとなくし物が見つかるってやつが」
『なんか恐っ!つか、よく知ってんね』
さては真田さん絡みで実践したな〜。と見透かされた言葉に一言余計だと言えば、いつものように笑い返された。
「置いた場所の心当たりとかは?」
『鞄の中も机の中も探したけれど見つからないのに……』
ウフッフーと今度は歌い始めるから、やっぱり呑気なヤツらしい。机の中にないとなると…あれっ、確かエアコンのリモコンって、基本枕元に置いてなかったっけ?夏に行った時はそこに置いてあったはずだけど。
『なるほどベッドの下か。ちょっと待っ…………あぁぁぁー!!!』
急な叫び声のせいで耳がキーンとした。それでも尚叫び続けるから、軽く耳から携帯を遠ざけ会話をする。反応からして見つかったっぽい。
「見つかったか?」
『うん!なんかエロ本見つかった!この部屋、前は兄ちゃんが使ってたからかな?』
「はぁ?!」
おーすげー!なんじゃこりゃー!というナマエの興奮した声が俺の頭を悩ませる。
女が…、しかも好きなヤツのベッドの下から……エロ本って…いくらお兄さんのだと言ってもショックだ。
『あわわっ!なんか気持ち悪くなってきた……』
「今すぐ閉じて元の場所へ戻しなさい!!」
『あーい』
ったく。
でも、ベッドの下にもなければ一体どこにいったんだ?
「……なぁ、確かベッドの近くにごみ箱なかったか?」
『あるけど……いやいやまさか。あるわけないじゃ……あったぁぁああ!!!』
ばんざーいばんざーいとリモコンも胴上げしているらしいが、次に酷い音がした。
『ぎゃあぁあああ!』
「次は何だよ」
正直、ナマエに合わせた喜怒哀楽は疲れる。けど、嫌いじゃない。
『落とした!リモコン!パカってやつと電池!消えちゃったよ赤也くん!!!』
「探せば出てくるだろ。じゃあオレ、切るぞ」
『えっ、何か予定あった?ごめんねつき合わせちゃって』
「いや、明後日までの宿題をな。気分的に今やんなきゃ一生やりそうにねえから。つか全
然わからねえんだよ」
『じゃあ明日、私が説明してあげるよ。今日のお礼も兼ねてね』
「マジで?!そりゃ助かるわ!!」
『うん、じゃあ明日ね。今日はありがと、楽しかった』
――楽しかった
ナマエはそう最後に言い、電話を切った。
携帯を閉じ、ひとつ大きく深呼吸をするが、予想外の展開に心拍数が早いのを感じる。
やっぱり惚れた方が負けらしい。
「俺の探しもんは、ナマエの気持ち。って言ったら、探してくれんのかな?」
半分冗談で半分本気。
もちろん本人に向かって言えるはずはなく、気を取り直して教科書を広げてみるがやっぱり理解できなかった。
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