そんな貴方でも 


私の彼氏は


「ナマエ最高ー!!」




立海大附属中学校男子テニス部部長、幸村精市





「はいお疲れ様」


「あぁ、サンキュ」



でも彼には




「今日も格好良かったよー!!」





秘密があるのです。




私の外見は男の子っぽくて、よく男と間違われている。

むしろ女だと言うとちょっと引かれるほど。

なんていうか、男に思われる→男っぽくする→余計男に。
この悪循環がダメなのはわかってる。


でも精市は、そんな私に告白してくれた。



正直、精市の事が前から気になってたから凄く嬉しかったけど、精市ってさ、清楚で、綺麗な女の子と付き合うイメージがあるから……



「私なんかでいいの!?」


と聞き返してしまったのはしょうがないと思ってほしい。


でも彼は


「俺はナマエが好きなの」


そう言ってくれて、ニコッと笑った笑顔が凄く眩しかったのを今でもよく覚えてる。


けどね、もし前からこの性格を知ってたら、精市を見る目がかなり違っていたのかもしれないよ。




「またシュートのキレがかっこよくなってた!」

「ほんと?練習の成果が出てきてんのかな」

「すっごく良くなってきてる!毎日ナマエのシュート見てんだもん!よく分かるよ!!」

目を輝かし、軽く興奮状態の精市。
身長がほぼ同じの私たちだから、そんな精市を見ると可愛いなと思ってしまう。

「あと私はシュート練だけだからさ、精市は練習に戻った方がいいんじゃない?」

「部活するよりナマエのシュート見てたい」


この人、部長の自覚があるのだろうか?

「それにさ……」

チラッとギャラリーに視線を向ける精市。
そこにはたくさんの女の子達が居て、私を応援してくれている姿が

「ナマエを応援するのは俺だけでいいのに」

「精市だって女の子に応援されてんじゃん。おあいこだよ」


ありがとーと女の子達に手を振ると物凄い奇声が飛んでくる。
でもそんな光景が精市は気に食わなかったらしく

「ナマエの浮気者ー!!」


体育館を去っていってしまった。

「……どーせ真田君にでも慰めてもらうんだろ…っと」


スパッとシュートを決め、やれやれと思いながら後片付けを済ましテニスコートへと向かう。



「浮気者はどっちだよ……」


* * * * *


「真田ー!!」


ナマエは俺のものなのに、向こうが浮気するなら浮気してやる!
って事で、俺は真田が居るテニスコートに戻ってきた。

「幸村……またミョウジの所へ行っていたのか」

「聞いてよ真田ー!ナマエが浮気した!しかも俺が居る前で!!」


真田の大きな背中にくっ付きながらさっきの事を説明するが、真田は呆れているけどお構い無しに会話を続ける。それにしても真田の背中はたくましい。


「浮気と言っても、ただミョウジが応援されているだけだろう。それに相手は女子。浮気の対象ではない」

「あのね真田。恋愛は男だろうが女だろうが関係ないの!ナマエはかっこいいから取られちゃうよ!!」


俺から離れていくナマエを想像するだけで焦ってしまう。それ程俺は、ナマエに惚れているんだ。


「どーしよ真田ー!」

「分かったから離せ!」

「じゃあ胸の中に飛び込むー!」

「もっと迷惑だ!!」





「まーたやっとるのぉあの2人」

「ただ幸村君が強引なだけだろぃ」

「相変わらずなんだ……」



私の声に振り返る仁王君と丸井君。その2人の先では、コートのど真ん中で繰り広げられている光景に私は呆れてた。勿論見ている全員もだ。



だって、部長が副部長の胸の中ってさ……


「なんで精市って、あぁなんだろう」

「ミョウジと付き合ったから、治ったんかと思ったんじゃがな」

「そう簡単には改善されないって事か」

3人の溜め息は、ほぼ同時だった。




それでは改めて紹介しよう。


幸村精市。

男子テニス部部長。


そして


「真田の胸板……癒される」



ゲイなんです。







最近つくづく思います。



何故そんな彼は私に告白したのだろうか。



私が男っぽいから?



確かに付き合い始めた頃は


「あぁ、この無駄のない体!鍛え上げられた腕!抱き締めたくなる背中!埋めたくなる胸!」



誉められているのに、喜んでいいのか分からなかった。



今までで一番ショックだったのは

「ナマエにおっぱいなんていらないよ。胸筋の方が絶対似合う!」


そんなセリフを、爽やかな笑顔を浮かべながら親指を立てられました。


いくら男に見えても私は女です。
女の大事な部分を彼氏に否定されたら立ち直るにも時間がかかります。




「私さ、女として精市に見られてないのかな?」



もしそうだったら、別れた方がいい。


「なんでそう思うんだ?」



なんでって……


「私たち、性別が反転してるんだもん」


私だって、彼氏に甘えたい時だってある。


でも甘えるのはいつも精市なの。


私が甘えたりしたら精市が悲しむから。




……そうだ


今思えば、私がやりたい事を全部精市がやってて、私がして貰いたい事を全部私がやってる。


「私……これでも女なのにな……」




女の子のミョウジナマエを、幸村精市は受け入れてくれないのだろうか?




「そうでもなかよ。あれでも神の子じゃき……惚れた女に悲しい想いはさせんじゃろ」

「そーそー。あれでも幸村君、なんだかんだ言って少しずつ変わってきてるしな」


私が精市に想われてる?

それは、どんな想い?


「ナマエ」

「精市……真田君は?」

「真田なら、嬉し過ぎて気絶しちゃったみたい。今度からは、イかせないように気をつけるね」

「そっ……そっか……」




ダメだよっ……

やっぱりダメだ……

私、精市の好きな女にはなれないや……



「ねぇナマエ」

「……なに」

「抱き締めて」


ほらやっぱり……

抱き締めてほしいのは私の方なのに。


だけど抱き締めてあげなきゃ。
精市が悲し……

「せっ、精市!?」


頭が真っ白になった。
だって目の前には精市の顔があるし、力強く、精市に抱き締められてるもん。


「抱き締めてほしかったけど、今はナマエを抱き締めたい気分かな。ねぇナマエ、よく聞いて。確かに俺は男が好きだよ。でもね、かっこいいナマエはもっと好きなんだ」

「……うん」

「でもって、かわいいナマエはもっともっと好きだよ」

「精市……」

「甘え続けてごめんね。これからは無理しなくていいから」

「無理なんかしない……それに、精市の好きなかっこいい私でもいるからね」

「ありがとう……ナマエ…」




精市はちゃんと、女の子のミョウジナマエを見ていてくれた。
けど私は、そんな精市を見ていなかった。
悪かったのは、私の方だったみたい。


「それから、大好きだからね」



両方の私を見てくれるなら、男の子っぽい私も愛してください。
私は精市という1人の人間を、愛しますから。







「そーいえば仁王とブン太」

「なっ、なんじゃ?」

「ナマエと仲良く話してたって事で、軽く握らせてもらうよ」

「ちょっと精市!」

「大丈夫大丈夫。痛いことはしないから。逆に気持ちよくしてあげるだけ」

「俺遠慮する!」

「逃がさないよ。2人の喘ぎ声にも、かなり興味あるしね」




だからと言って、彼の男好きはいつまで続くか分からない。




(でもね精市、そんな貴方でも大好きだよ)



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