ウチの嫁さんは
〜仁王雅治さん家の場合〜
仕事も終わり22時頃に帰宅。だけどウチの嫁さんは俺の帰りを今か今かと待っとるやつじゃから、玄関の開く音が聞こえれば「お帰りなさい」と勢い良く胸に飛び込んでくる。のじゃが……
「あれっ」
いつでもばちこいと両手を伸ばし構えてた俺。でも部屋から嫁さんが出迎えてくれる様子はない。
「なにしとるん?」
「あっ、お帰りなさい」
構えてた自分が恥ずかしくなり、渋々リビングへ行くとランニングマシーンで走っとるナマエが素っ気ない態度で俺を出迎えた。理由はまあ普通にダイエットじゃと。明日に控えた同窓会の為らしい。
「あの時みたいに、俺の為に綺麗になってくれるんかと思ったなり」
「あの時?……あー、結婚式ね。そりゃウエディングドレス着たかったし、綺麗だと思って欲しかったからさ」
「ほぉ。んじゃ今回は?」
「……教えませーん」
「んじゃ身体に聞いてみるしかなさそうじゃな」
ネクタイを外し、走り終わったナマエを横抱きし寝室へ向かおうとしたらかなり拒絶された。いくら汗掻いてるからと言っても、流石に傷つくぜよ。
「理由はただひとつ。雅治の奥さんとして胸を張りたいだけです。だからほら、ベッドじゃなくお風呂向かってよ」
今日は特別サービスで背中流したげるわよーとご機嫌になったナマエに呆れつつ、久々に一緒に入る風呂に多めに見てやる俺は本当に優しい夫じゃと思う。
* * * * *
「ただいまダーリン!可愛い奥さんが帰ってきたぞー!!」
同窓会から帰ったのは既に日も変わってる時間だった。
それでも俺は寝ずに待って(正確には睡眠妨害を防ぐ為とかは思っとらん)いて、この酔っ払いの世話をせんといけない。にしても、よお無事に帰ってこれたな。
「どうじゃった、懐かしい友人は」
「楽しかったよー。でもねー、私、凄く綺麗になったねーって言われてさぁ、幸せのお陰じゃないのかなーて友達が言ってねー、えへへっ、まさはるの奥さんでよかった。だーい
すきだーよー」
「俺も好いとおよ」
「ほんとぉ?よかったー。うーん…。おやすみ」
えっ、ちょっ、そこで終了?
いくらアルコールのせいだとしても、雰囲気出たっちゅーに。
じゃが明日は丸1日休みじゃき。昼間っからでもええじゃろ。
隣で気持ちよさそうに眠る奥さんに1つキスを落とせば、彼女は幸せそうに笑った。
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