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01

「あれ、呂佳じゃん!」
「……よォ。」


春休みがあけて間もない今日この頃、いつものようにコンビニのバイトに勤しんでいたら中学の同級生が来たんだもん、びっくりしちゃった。予期せぬ再会に私は嬉しくなって缶コーヒーやらサンドウィッチやらを適当に詰めながら同級生を晩ご飯に誘った。ものすごく嫌な顔をされたけど、きっと外で待っててくれると思うんだ。



















「お待たせ!久しぶりだねー呂佳!」
「変わんねェな、お前。」
「呂佳も変わんないよ。そのふてぶてしい顔ですぐわかったもん。」
「殴るぞ。」
「あははっ!どこ行く?何食べたい?」
「あのな……お前俺がさっき晩飯買ってたの見たよな?」
「デザートくらいなら奢るよ。その代わり晩御飯奢って!」
「明らかに俺の方が不利じゃねーか。」
「気にしない気にしない!」
「……じゃートルファン行くか。」
「あはっ、懐かしいね。」


同級生……呂佳は中学の三年間ずっと同じクラスだったうえに同じ部活。結構な腐れ縁だと思う。高校は別だったからずっと会ってなかったけど、こうして四年後に偶然会えるなんて思ってもみなかった。そりゃあテンションも上がるってもんだ。トルファンは学校の帰り道にあったからよく部活終わりにみんなで寄っていた。懐かしいなあ。


「ねえ、呂佳は今何してるの?」
「今年から大学通ってる。」
「今年から?じゃあ一年浪人したの?」
「まあな。」
「ふーん。呂佳バカだったもんねぇ。」
「うっせぇ。」
「どこの大学?県内なんでしょ?」
「美丞。」
「……うっそ!?頭良いとこじゃん!」
「そーか?」


美丞って言ったら県内でもなかなかの大学だ。呂佳がそんなところに合格できたなんて信じられない。授業中は寝てばっかりでそのくせ偉そうに人にノート要求したりして……野球ばかりやってて勉強なんて全然してなかったくせに。
高校でも野球は続けていたらしい。朋也があんなことになったからきっとすごく迷ったんだろうけど……呂佳が野球を続けていてくれて私は少し嬉しかった。聞けば朋也も美丞でマネージャーとして野球をやっていたみたいだし。


「お前は?何してんの?」
「私は体育大学で身体学やってる。」
「……それってアイツのため?」
「は……そ、そんなわけないじゃん!まあ……きっかけの一つではあるかもしれないけど……」


確かに朋也が肩を壊した時、何もできない自分がもどかしかったけど……それだけで整体師になろうと決めたわけじゃない。他にも幼馴染とか弟とか…私の周りには野球関係者が多くて、更に肩を壊してしまう人が多かった。だから朋也一人だけのためじゃない。断じて。焦って弁解したら、呂佳は思いっきり顔を歪めていた。


「何その顔。」
「いや、相変わらずイラっとすんなーって思って。」
「何で!?」
「アイツが今何してるか教えてやろうか?」
「!」


そりゃあ……知りたいけど……呂佳のニヤニヤ顔が腹立つ。同級生の進路が気になるのは別に普通のことじゃん。


「美丞大の文学部。んで、美丞大狭山の野球部監督。」
「!」
「ちなみに俺はそこのコーチ。」
「!?」


聞いてもいないのに呂佳は教えてくれた。
ちょっと待って、いろいろ突っこみたいところがある。まず私よりバカだった朋也までが美丞大に合格していたこと。それから朋也が野球部の監督やってることと、更に呂佳がそこのコーチやってること。


「そうなんだ……二人とも、また野球やってるんだね。」
「……ああ。」


驚いたけど、とにかくこうして二人が今でも野球に関わっているのは私としても嬉しい。私自身も野球は好きだ。弟と幼馴染が小学校から野球をやっていてよく見に行ってたし、今でも甲子園とかプロ野球の観戦はよく行く。
でもやっぱり中学の時……マネージャーをやってた時が一番楽しかったかな。高校では硬式野球部が無かったからなんとなくダンス部に入っていた。その時も楽しかったけど、青春してたのは間違いなく中学の頃だった。


「告白しちまえばいいのに。」
「はあ!?た、確かに中学の時は好きだったけど別に今更どうこうなりたいわけじゃ……!」
「あっそ。」
「……」


自分からふってきたくせに呂佳の返答はそっけなかった。まあいつものことだけど!
確かに私は中学の時、朋也のことが好きだった。よく呂佳にさっさと告白しろって急かされたものだ。卒業するまでには絶対告白しようと思ってたんだけど、中3の夏に朋也が肩を壊して、タイミングを失ったまま卒業してしまった。
だからって中学を卒業してからもずっと朋也のことが好きだったわけじゃないもん。高校2年生の時は彼氏だってできたし。


「……ちなみに彼女とかは……」
「知るか。自分で聞けよ。」
「ケチ!」
「お待たせいたしました。」
「あっ来たよ!餃子1個ならあげるよ。」
「じゃーもらう。」
「1個だけだからね!」
「はいはい。」


その後、呂佳の視線に耐えられなかった私は結局餃子を3つもあげてしまった。呂佳の奢りとは言えなんて優しいんだろう。
それにしてもやっぱり旧友が変わらないっていうのは嬉しい。呂佳は昔から強面で無愛想なもんだから中学時代彼女なんてできなかったけど、本当はすごくいい奴なのだ。そのギャップを見せたら女の子なんてイチコロなのに。勿体無いなあ。


「携帯鳴ってるよ。」
「ん?ああ……滝井からだ。」
「!」
「代わってやろうか?」
「いっいいいいから!早く出なよ!」
「あーもしもし。」


いちいちからかわないでほしい。今更電話するくらいなら会って話した方がマシだ。


「呼ばれた。そろそろ出るか。」
「あ、うん。」
「来るか?」
「は!?」


反射的に首を振った。いや確かにさっき会って話した方がマシだって思ったけど、やっぱいきなりは無理ですごめんなさい。
携帯をポケットに入れた呂佳は伝票を取って一人レジの方に行ってしまった。ほら、そんなところがかっこいいんだよなあ……惚れないけど。


「じゃあね。久しぶりに話せて楽しかった。」
「おー。」


私は原付、呂佳はバイクで家も反対方向だからここでお別れだ。


「滝井だけどな……」
「!」
「彼女、いねーよ。」
「……」
「中学から今まで、ずっとだ。」
「……どうせ野球一筋だったんでしょ。」
「(お前がいるからだろ、バーカ。)じゃーな。」
「うん。」


……やっぱり呂佳は優しいけど意地悪だ。今更私がそんなことを知ってどうにかなるわけないのに。






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