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19

さっきのムカデでは野球部のみなさんが勢ぞろいで応援してくれてちょっと吃驚しちゃったけど嬉しかった。その中に高瀬くんもいて、私の名前呼んで「頑張れ」って言ってくれたのがわかった。応援されるのってこんなに嬉しいものなんだなあ。私の応援があったところで何かが変わるわけではないけど、これからはもっと気合い入れて応援しようと思った。


「名字さんさっき大丈夫だった?」
「大丈夫だよー痛くないし。」
「バカ名前、肘血ィ出てる。」
「え、ほんと?」


さっき転んだ時、知らないうちに肘を擦りむいてみたい。司に指摘されて初めて気付いた。でも血が出てるって言っても滲んでる程度だし、大した怪我じゃない。


「だ、大丈夫!?保健委員のとこ行かないと……」
「でも、次部活対抗リレーだから……」
「え?名字さん出るの?」
「ああ、野球部見んのね。」
「うん。」
(え?野球部?何で!?)


それに、この後すぐに部活対抗リレーが始まってしまう。保健委員のところに行ってたらみんなが走ってるとこ見れないし、撮れないもん。



















部活対抗リレーに出るのは1番から迅くん、本山さん、山さん、慎吾さん、高瀬くん、和さん、青木くんの6人。陸上部とかサッカー部とか、速そうなチームばかりだけど、このメンバーを見ると正直勝てそうな気がする。だって迅くんは部内一の俊足だし、他のみんなもすごく足速いもん。


「名前サンこっちこっちー!」
「あ、利央くん!」


どこで見ようかなとウロウロしてたら野球部のみんなの一角から利央くんが呼んでくれた。
私は写真撮る気満々だったんだけど、司が写真撮ってたら応援できないじゃんっていうことで、写真は健ちゃんと梅ちゃんに任せることにした。ありがたい。
ちなみに司はこの後女子の部活対抗リレーに出場するからそっちもしっかり見なくちゃ。肘の手当てしてもらうのはその後でいいや。


『位置について、よーい……』


パァンッ


「迅がんばれーー!!」
「わっ、すごい!迅くん1番だよ!」
「迅はっえーー!」


ピストルが響いてみんな一斉にスタートダッシュ。
第一走者の迅くんは陸上部の人をおさえて1位を走っている。すごい!そして1位のままバトンと本さんに渡して、山さんまでは順調に1位をキープ。でも陸上部の第四走者が今年の春大で新記録を出したらしい人で、どんどん差が縮まっていってしまう。ほぼ同着、っていうところで第五走者、高瀬くんにバトンがわたった。
競技は野球部と陸上部の一騎打ちの展開になってきた。次の陸上部の人は3年生でやっぱり速い。けど、高瀬くんも速い。


「高瀬くんっ頑張れーーー!!」


後半50m、少しずつだけど高瀬くんが陸上部を抜かしていって、少しリードした状態で和さんにバトンタッチした。そしてその後もリードを保ったまま、野球部は1位でゴールした。


「陸上部に勝っちゃったね!!」
「なんかすごくね!?」


終わった後も興奮が抜けきらず利央くんと顔を見合わせる。だって、陸上部を差し置いて野球部が1位を取っちゃうなんて……かっこよすぎる。


「じ〜ん〜〜!お前女子にオーエンされてたな〜!」
「な……うぜーよ利央!」
「みなさんお疲れ様です!」
「名前ちゃん応援ありがとね〜。」
「いえ、すごかったです!感動しました!」
「いや〜途中ヤバかったけど……準太、よくやった!」
「ああ、準太で巻き返してくれたのが大きかったな。」
「そ、そんなことないっスよ。」
「うん、高瀬くんすごかったよ!」
「!」


うんうん。走ってる高瀬くん、かっこよかったなあ。健ちゃん、ちゃんと写真撮ってくれてたかなあ。


「次は女子の部活対抗リレーだな。」
「あっ、応援しなきゃ。」
「ハイ、名前は保健委員のとこ行きなさーい。」
「司!?」


次は司を応援するためにベストポジションを取ろうと思ったのに、司本人に回れ右されてしまった。


「名字、怪我してんの!?」
「さっき転んだ時に擦りむいちゃって。大したことないよ。司の応援してから……」
「ダメ!ばい菌入っちゃうじゃん。」
「でも……」
「高瀬、私もう準備しなきゃだから名前を保健委員のとこまで連行して。」
「お、おおわかった。」
「司……」
「大丈夫、あそこからでも見えるから。」
「本当?」
「ん!」


それなら問題無いかな。
高瀬くんはもちろんかっこいいけど、司だって負けないくらいかっこいいんだ。もし司が男の子だったら女の子にモテモテなんだろうなあ。


「じゃー行こっか。」
「うん。」


そういえばさっきさり気なく司が高瀬くんに私のことを連行してって……多分気を利かせてくれたんだろう。救護テントなんて一人で行けるのに、私は高瀬くんと一緒にいたいがために遠慮せずにお願いすることになってしまった。嫌な顔一つしないで心配してくれる高瀬くんは本当に優しい。


「俺たちの時に行けばよかったのに。」
「だって見たかったから……」
「えっ。」
「?」
「いや……俺、名前の応援のおかげで頑張れた……かも。」
「!」


た、高瀬くん、そんな不意打ち反則です……!







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