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「#エロ」のBL小説を読む
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01


おれが初めて彼女を見たのは高校1年の夏で、すごく暑い日だったのを覚えている。
彼女はその日、おれが学校に行くまでにある畑の雑草取りをしていた。
頭には麦わら帽子、首にはタオル、手には軍手……完璧な農家スタイルだが、歳は多分おれと変わらない。
暑そうに…そして楽しそうに汗を拭った姿が印象的だった。


「あ…」


立ち上がって体をうんと伸ばす彼女の隣にふと、笠を被った人……いや、妖怪が視えた。
その妖怪は畑の作物を狙っているみたいだった。
追い払うべきか……考えたが、もしここでおれが出て行っても変な目で見られるだけだ。
彼女本人に危害を加えようとしてるわけじゃないし…ほっといても平気か…。


『ギッ…!?』


そう思って通り過ぎようとしたら妖怪の手元に石が当たった。
彼女じゃあ…ない。石が飛んできた方を見ると、子どもが木の上に座っていた。さっきの石はこの子が投げたらしい。
妖怪は子どもを見るなりそそくさと逃げていき、子どもは得意気にオニギリにかじりついた。
もしかしておれと同じなのかと思ったけれど、よく見たら子どもに頭には猫のような耳が生えていた。


「妖か……!」


呟いた瞬間、子どもと目が合った。
そしてその子は目を見開くと、軽い身のこなしで木から飛び降りて森の方へ逃げてしまった。
なんだったんだろう…。確実なことは言えないけど、多分あの子は彼女を守ってあげていたんじゃないのかな。
…そう考えると少しだけ嬉しくなった。


「あれ?私のオニギリが無い…」







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