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「#エロ」のBL小説を読む
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14

「おはよう、名字さん。」
「おはよう、夏目くん。」


次の日、家を出ると門のところに夏目くんが立っていて、その姿を確認した途端胸のあたりが温かくなった。


『あっ、名前!夏目さま!昨日はありがとう!』
「ヒヅキ、おはよう。」


畑の向こう側でこっちに向かって大きく手を振ってくれているのは小熊の妖、ヒヅキです。
夏目くんが妖に名前を返してるところを目撃して以来、私も妖が見えるようになりました。
そのことに関して夏目くんは罪悪感を感じているみたいだけど、私は夏目くんを恨んでなんかいない。夏目くんと同じ景色が見えるようになって嬉しいくらい。
むしろ私が怒りたいのは、それが原因で夏目くんが私を避けるようになったことだ。本当に悲しかったんだから。
まあ、今こうしてまた一緒に登校してくれているからいいんだけどね。


「ひっ…」
「どうした?」
「あ、あそこ、一つ目の……」


しかし、夏目くんが見ている景色はいいものばかりじゃない。
ヒヅキみたいに動物の姿をしていれば可愛いと思うんだけど、妖怪っていうのはそもそも恐ろしいもので…。
もじゃもじゃのけむくじゃらだったり、黒い体にお面をつけていたり……小さい頃恐れていた「おばけ」という認識に近い。


「…ああ、アイツは大丈夫だよ。いいヤツなんだ。」
『あ!夏目様ー!おーい!』


でも、夏目くんと一緒に見るんだったら大丈夫だと思えた。
まだいろいろと吃驚することも多いけど、妖だって人間と同じ場所で生活してるんだと思うと親近感が沸いてくる。
夏目くんみたいに、たくさんの妖とお友達になれたらいいなあ。


「名字さん…、もし妖のことで何か困ったことがあったら、真っ先に教えてくれ。」
「え?」
「妖は…もちろんいいヤツもいるけど、いいヤツばかりじゃないんだ。人を騙して喰う妖だっている。」
「……」
「もし変なのを見たり、絡まれたりしたらおれに教えてくれ。力になりたいんだ。」
「…うん、わかった。」


やっぱり夏目くんは優しい。
私には夏目くんがいるから大丈夫だけど、もし夏目くんが今までずっと一人でこの景色を見ていたのだったら……本当に辛いのは夏目くんだ。怖い思いとか嫌な思いとか、たくさんしてきたんだろうな。


「夏目くんも、同じだよ。」
「え……」
「困ったことがあったら私に言ってほしい。私だって夏目くんの力になりたいんだよ。」
「………ありがとう。」


私の思いを伝えたら、夏目くんははにかんで微笑んだ。
わ…、初めて見る顔だ…!男の子に対して失礼だけど、可愛いと思ってしまった…!
…できれば、私が夏目くんのこの笑顔を守ってあげられる存在でありたいと思った。











−その後の1組−


「ふんふーん♪」
「機嫌良いな、名字。……夏目のことは解決したのか?」
「うん!夏目くんって、すごく可愛く笑うよね!」
「いや……おれに同意を求められても困る。」






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