銀魂 | ナノ
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01



ピンポーン


万事屋銀ちゃん。なんとも胡散臭いうえに、こんな看板だけではいったい何をやっているのかが全くわからない。
しかし実際はその名前の通り、報酬さえあればどんなことでもやってくれるらしい。


ピンポーン

この時代にそんな商売で生計を立てられるのかはいささか疑問だが、とりあえず今、1人の客がインターホンを鳴らしていた。


ピンポーン


もうこれで3回目。なかなか出てこない主に構わず、客はインターホンを鳴らし続けた。


ピンポーン


「はいはいピンポンはいっかいい゛ぃい゛い゛!?」


やっと出てきたと思った瞬間、客はそいつをぶん殴った。











「……」


グーで吹っ飛ばされたここの主、坂田銀時は頬をさすりながら目の前の人物を見上げた。
彼女は豊満な胸の前で手についた埃をパンパンと2回、叩き落して一言。


「確かに一発いただきました……ってアレ?銀時?」
「ん?お前は……」


彼女は目の前の尻餅をついた男に目をやると、2,3回大きな猫目を瞬きして、それから男の名前を呟いた。
銀時も目の前の女性になんとなく見覚えがあった。
後ろでまとめられた紅みがかった長い髪。人懐っこそうな猫のような目。


「銀時だ!」
 ――「ごめん銀時ィー…」

「久しぶりー!何年ぶりだろ?元気みたいだね!」
 ――「銀時のプリン食べちゃった!」


その時銀時の脳裏に昔の映像が流れ込んだ。
それはもう10年近く昔のこと。彼が「白夜叉」と恐れられていた、攘夷戦争のころだ。
そうだ、目の前の彼女はその時の戦友に似ていた。というか同じだ。前髪が無駄に伸びたぐらいで他は何も……


「……………どちらさま?」


空間が、止まった。
確かに彼女は似ていた。銀時も確信を持って彼女の名前を口に出そうとしていた。
しかし、視線を顔から下にもっていったところで決定的な違いがあったのだ。


「えええどちらさまって…、名前だよ名前!忘れちゃったの銀時!?」


自分で名前と名乗った女性はすごい勢いで銀時の肩を掴んで揺らした。
はたから見れば名前が銀時を押し倒しているように見えるが、2人とも全く気にしていないようだ。
まあそういう雰囲気でないのは誰が見てもわかるのだが。
名前という名前も銀時が思い出していた戦友と同じ名前だ。
…だが、違うのだ。銀時が知っている彼女とは。決定的に。


「いや、なんつーか……」


目の前に広がる風景、つまり胸の谷間を、いつもの死んだ魚のような目で凝視しながら銀時が呟いた。


「俺の知ってる名前ってのはもっとこう………まな板的なぶふッ!!?」


その言葉を口にした瞬間、銀時の額にものすごい衝撃が走った。


「人は成長するんだよ文句ある?」


原因が何か、銀時にはすぐにわかった。
目の前には自分を跨いで仁王立ちで構える名前。満面の笑みだが背後に背負うオーラは毘沙門さながらである。


「この頭の硬さは確かにピー子ッ…!!」
「名前だっつってんだろーが。」


もう一発入った。わざわざ銀時の胸倉を掴んで、また笑顔でいった。
二発も石頭の頭突きをかまされてはもう間違いない、目の前の女性は銀時の知る名字名前だ。
昔は戦闘の際サラシを巻くまでもないAカップだったのが10年でGカップに成長した以外、何も変わっていない。


「ちょ、おま、2回同じとこって…」
「銀時ってばこんなとこで何してんの?」
「お前そりゃコッチの台詞だ。ピンポン押していきなりカウンターかますってどんな挨拶?」
「私今飛脚やっててさ、下のお登勢さんにグー届けてくれって頼まれたもんで!」
「飛脚が届けるモンじゃなよね、それ。」
「それから伝言!家賃払えクソヤローだって!」
「もうちょっと待てっつってんだろーがクソババァっつっといて。」
「ヤダ!!ねぇ銀時、プータローだったら私と一緒に飛脚やろーよ!楽しいよ!」
「何勝手にプータローにしてんの!?ちゃんと働いてますから!てか今断るのめちゃ速くない?」
「へーー、何やってんの?」


こういう、成り立っているようであまり成り立っていない会話も昔のままである。
銀時は小さくため息をついて、それでも昔と変わらない戦友に少し嬉しそうに、頭をかいた。


「万事屋。」
「……」


銀時からやる気のない答えを聞くと、名前は口を開けて大きな目で銀時を見つめた。
目の前に立っている男は昔と同じ、死んだ魚のような目をして真っ直ぐ立っている。


「銀時らしいね!」


名前もまた、昔と変わらない戦友に微笑んだ。






■■
銀さんがたまに名前さんを「ピー子」と呼ぶのは、名前さんが高杉をお杉と呼ぶからです。




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