レイジュと貧乏女
男だらけのこの国にイチジが一人の女の子を連れてきた。
その子が来てからというもの、この殺伐とした殺戮集団の城の雰囲気が少しずつ変わってきている。
「おい、どこに行く。」
「コゼットさんにお料理を教えて頂く約束をしたんです!」
「お前は料理をする必要はない。」
「でも、私も料理うまくなって、イチジ様に召し上がって頂きたいんです…!」
「……1時間だけ許す。」
「ありがとうございます!」
その根源にいるのが、イチジ。
表情の変化はわかりにくいけど、彼女と接する彼の雰囲気が柔らかいのは一目瞭然。その変化をもたらしているのは間違いなく彼女の存在だった。
平凡のように見えるけれど、あのイチジに対して臆せず自分のペースを貫けるなんて常人にはできないこと。普通の女であれば彼の威圧感に怖気づくはずなのに。
「ずいぶん気に入ってるのね、あの子のこと。」
「…あれはおれが貰ったものだからな。」
「もう3週間も経つわよ?最長記録ね。」
「…あいつは報酬だ。一生使うと決めた。」
それってつまり、この先ずーっと傍にいさせるってこと?その意味がこの子にはわかっているのかしら…。情も何もない弟だと思っていたけれど、これはいい傾向だわ。
「ふふっ…」
「…何を笑っている。」
「別に?可愛い妹ができたみたいで嬉しいのよ。」
「……」
ただの女の子相手にあのイチジが翻弄されてる……その様子はすごく面白いから、しばらくは遠目に見守ってあげることにしようかしら。
end≫≫
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