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ニジと貧乏女

イチジが戦争中の国から女を一人連れて帰ってきたのは2週間前のことだ。
別に女を連れ帰ること自体は初めてではないし珍しいことでもない。俺も出先で気に入った女がいれば持ち帰る。でもだいたい1週間も経たずに飽きて捨てる。それはイチジも同じだったはずだ。
それなのに…何なんだ、あのイチジの様子は。


「おい、この傷はどうした。」
「今朝お庭の掃除をしていたら転んでしまいました。」
「医療班を呼ぶ。」
「ええ!?そんな大袈裟な…唾つけとけば治りますよ。」


ただのかすり傷をこれほど大事に扱ったことが今まであるだろうか。ただの性欲処理の女に擦り傷ができようが気にする必要はないはずだ。


「それより、いつまでそのみすぼらしい服を着てるつもりだ。」
「え?」
「ドレスを用意させたはずだ。」
「いえ、あの、素敵なお洋服なんですけど、あんなヒラヒラしてると動きにくいですし…」
「なら体にフィットするものを用意させる。」
「け、結構です!あんな高そうな服着れません!」


もうひとつ引っかかるのが、この女の容姿が至って平凡だということだ。
おれもイチジもヨンジも美女には目がない。別に不細工とまでは言わねェが、目を引くような容姿ではない。そんな普通の女に何故ここまでイチジが執着するのかがわからなかった。
そうなると、考えられる理由はあとひとつだな。


「おいイチジ!」
「……何だ。」


女を着替えに行かせて残ったイチジに話しかけた。


「あの女、夜の相手が相当うまいのか?」
「……」


他に女を大事にする理由なんてこれくらいだろう。
生娘みたいに思わせといて夜になると痴女に豹変するとか…なかなかいいギャップじゃねーか。


「だったら今夜おれにも貸してくれよ!いいだろ?」
「…夜の相手をさせたことはないしお前に貸す気もない。」
「はあ!?」


性欲処理でもないってんなら、あんな女何のために連れて来たんだよ!?
いよいよわからなくなってきた。あの女の何が、イチジを虜にしてるのか。


「お、お待たせしました!えっと…変じゃないですかね…?」
「……悪くはない。」


平凡な女がただ着替えただけでこんなに嬉しそうな顔をする兄を見たのは初めてだった。





■■
嬉しそうと言ってもその変化は小さいものです。




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