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ENEMY!


「今月の手配書リストだ。よーく覚えておくように。」


軍曹の言葉に、周りの兵士達が「はっ!」と剛健な返事をする。その裏で私は「はーい」と間延びした返事。
さてさて、今月はどんな人がいるのかな。ご飯を食べながら眺めるとしよう。










海軍に勤め始めて早2年。私の階級は雑用から一つ上がっただけのただの兵士A。
「お前には向上心がない」と軍曹に注意されたのは何回になるんだろう。数えたことがないからわからない。
まあ…我ながら向上心の欠片も無いと思う。海軍に入ったのだって、両親が勧めたからなんとなく。お給料もいい感じだし。
だから昇格できなくても私は何の不自由も感じてないんですよ。
むしろ昇格したらさ、リスク増えるじゃん。死亡フラグ立ちまくるじゃん。私はのんびり平和に暮らしたいんだよね。

あ、今日のお昼はカレーだ。海軍のカレーって何でこんな美味しいんだろう。
福神漬けをたくさん乗せたカレーを持って、私は空いてる席に腰掛けた。
右手でスプーンを握りながら、左手で手配書をペラペラとめくっていく。
この手配書だって、軍曹には「よく覚えとけ」って言われたけど実際覚える気はそんなにない。
だって私が言うのもなんだけど、この島って滅多に海賊が寄らないから平和ボケしまくりなんだよね。
もし万が一来たとしても知らぬが仏って言うじゃない?怖い思いしたくないし。
それでも私が手配書をめくる理由は……軍曹の視線を気にして、っていうのもあるけど、一番はずばり、イケメン探しだ。
海賊っていうとゴツくて野蛮な人間ってイメージだけど、最近はモデルさんにも負けないイケメンがいたりするんだよね!
持論だけど、イケメンってある意味正義だと思うんだ。だって見てるだけで幸せな気持ちになれるもの。
目の保養だもの。このストレス社会には欠かせない要員だよ。
ふふっ、今回はどんなイケメンさんがいるのかな!ちなみに今のところの1位は四皇の赤髪のシャンクスさんだ。


「……!!?」


ある1枚の手配書を見た時、私の中を電流が走った。
イケメン…っていうわけじゃないと思う。でも、確かに私はその笑顔に心臓を鷲掴みされた。


「モンキー・D・ルフィ……」


手配書の中で笑っている彼の名前を呟いたら、胸がトクンと高鳴った。








「よし、買い忘れはねェな。」
「はあ……」


ルフィさんに一目惚れして早3日。
私は同僚と共に軍曹から買出しを頼まれた。つまりパシリだ。
ちなみにこの同僚は私と同じ時期に海軍に入ったくせに私同様何の進歩もしていない、一番付き合いが長い男だ。
こいつの場合やる気はあるがそれが空回りしちゃうタイプだ。


「おい、犬のウンコ踏むぞ。」
「はあ……」


まあ今の私にとってパシられようが犬のウンコ踏みそうになろうが、そんなことはどうだっていい。
あれから私の頭を占めるのはルフィさんのことばかり。年は私と同じくらいかなとか、声はどんな感じなのかなとか。
ルフィさんの事を考えると、壁に貼ったルフィさんの手配書を見ると、胸のあたりがキュンとなる。人はこれを恋と呼ぶんだろう。
だがしかし、私は海兵で、ルフィさんは海賊。決して結ばれない運命なのだ。ていうかそもそも会う機会がない。
私の恋は希望のきの字も見えない。溜め息をつかずにいられるか。


「…最近お前元気ないけど、何かあったのか?」
「……はあ…いいよね、リクは能天気で。」
「能天気はお前の代名詞だろーが。」
「…はあ……」
「……ま、何か食うか?まだ時間あるし、ちょっとぐらいいいだろ。」
「……紫いもまん。」
「了解。」


リクはなんだかんだ私を気遣ってくれるいい奴だ。…昇格できないけど。
海賊に恋しただなんて言ったら……さすがのリクでも呆れるかな…。


「おれ、飲み物買ってくるからここで待ってろよ。」
「うん。」


リクが奢ってくれたのは新発売の紫いもまん。これ食べたかったんだよねー。
…おっと、食べ物で元気になるなんてどうかしてるぜ私!
それにしてもいい匂いだ。先に食べたら怒るかな?いやいや飲み物買いに行ったんだからすぐ戻ってくるって。我慢だ私!


「あははっ!」
「待ってよー!」


……はあ。子供は無邪気でいいなあ。私はこんなにも苦しんでいるというのに。
やっぱり、諦めた方がいいのかあ…。海賊との恋なんて、実るはずがない…。
でも、一度でいいから会ってみたかったな……ルフィさんに。一度見納めておけば、諦めがつくのに。
麦わら帽子に左目の下に刀傷。赤いノースリーブの服に短パンに草履……


「………」
「………」


…そんな格好をした人が、今目の前にいますがこれって夢ですよね。


「………」
「………」


そしてなんか、私の方をじーーーっと見てるんですが、これって私の妄想ですよね。
そんなまさか…こんなところにルフィさんがいるわけ……


「よォルフィ。何してんだ?」
「ん?」


あったーーーー!?
え、今あの腹巻の人「ルフィ」って言ったよね!?間違いなく言ったよね!?
え、うそ、今私の目の前にルフィさんがあああ…!?


「いや、あいつさ…」
「あいつ?」


え!?え!?あいつって、私の方見ながら言ってるけど……わ、私のこと!?
どどどどどうしようっ……ルフィさんがあんな熱い視線で私のこと…!!


「むむむ麦わらァ!?」
「ん?」
「かっ覚悟ーーーガフッ」
「え、弱っ!」


飲み物を買ってきたらしいリクが腹巻の人にのされた。そりゃもうあっという間にやられた。まあ、リクはいつもそんなポジションだ。
それはさておき、やっぱりルフィさん、私のこと見てるよ!
ももも、もしかして1万分の1の確率でもしかしたりしちゃうの…!?


「なあ…」
「ひっ、は、はい!!」


気がついたときにはルフィさんが目の前に立って私を見下ろしてる。
はわわわわ…心臓が破裂しそう…!!
そんなっ、ダメです、私は海兵で…あなたは海賊なのに…!


「それくれ!」
「…………はい。」
「サンキュー!お前いい奴だな!」
「…………はい。」
「じゃーなー!」


………紫いもまん、取られました。







■■
大した内容ではありませんが収まりきらなかったので続きます。




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