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01


夏目名前さん。今年の夏、俺のクラスに転入してきた女の子だ。
これがまたすげー美人さんなもんだから、転入以来彼女はすっかり有名人になった。セミロングの髪の毛は見た感じすげーサラサラしてそうで、それを耳にかける仕草は大抵の男を魅了すると思う。誰に対しても等しく接する態度は人当たりがいいとも言えるけど、俺には一線を引いてるように見えてしまう。
話しかけられれば笑顔で対応する。けれど自ら人と一緒にいようとは思ってないらしい。休み時間は自分の机からあまり動かないし、帰りなんかは何かと理由をつけて友人の誘いを断っている。


噂に聞いたところ、彼女は両親を早くに亡くしているらしい。今回の転校も、違う親戚に預けられることになったからだそうだ。
言われなければ気付かないけど、言われてみればああなるほどな、と思う。
彼女の笑顔はどこか寂しい。笑いかけている相手を目に映していない。一線を引いてるように見えるのはそのせいかもしれない。


そんな夏目さんと、隣の席になった。


「よろしくなー。」
「よろしく。」


俺に向けられた夏目さんの笑顔は確かに綺麗だったけど、その瞳に俺は映っていなかった。











夏目さんと隣の席になって1週間。
友人たちからは「羨ましい」だの「ずるい」だの言われたけど俺の生活には何の変化もない。
交わす言葉は必要最低限。例えば小テストの答え合わせとか、落ちた消しゴムを拾ったりだとか。でも、意外と授業中は寝ていることとか、シンプルな文房具を使ってることとか、今まで知らなかった夏目さんの一面を知ることもできた。
そんなことを考えながら部活帰り、自転車で夜の歩道を走っていた時だった。


「うぉわっ!?」
「!!」


ガシャン


曲がり角から突然飛び出してきた人影に対応しきれず、俺は自転車ごと豪快に倒れた。飛び出してきた人も傍に倒れている。やっべ、当たっちまったか?
街灯に照らされたその人物を見て驚いた。何故なら隣の席の夏目さんだったからだ。


「夏目さん!?え、ちょ、大丈夫!?」
「高尾くん…!ごっごめん!」
「や、それコッチの台詞で…怪我は!?」
「だ、大丈夫だから…えっと、ご、ごめんね…!」
「えっ、あ……」


夏目さんは俺にまともな謝罪もさせないで走っていってしまった。まるで何かから逃げているみたいだ。でも、周りを見渡しても変質者とかそういうのは見当たらない。
とりあえず俺は倒れた自転車を起こして、明日のことを考えた。





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