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黒子×ツンデレ女子B



「黒子テツヤです。」


昨日、好きな人の名前を知った。
その名前を頭の中で再生する度に幸せな気持ちになる。ふわふわする。ドキドキする。
なんだこれ、何かの呪文か何かかな。そう思う程、彼の名前は特別だった。


「名前を知ったぐらいで浮かれるな!」
「っ!?」


そんなふわふわした私に友人が一喝した。














友人曰く、名前だけ知っても次に繋げなければ意味がないとのこと。
確かに名前知れて良かったけど、他のことは何も知らない。クラスも部活も委員会も、何も。
そんなんじゃ何も進展しないと怒られたけど、別に私、進展しなくても……と呟いたら更に怒られた。理不尽だ。
でも確かに、会えないのはなんかこう、物足りないなあ。他のクラスをチラチラ覗いて探してみてもやはり例のごとく見つからない。結局今日も見つからないまま放課後の時間になってしまった。
後はいつも通り部活…だけど今日は体育委員会の集まりに行かなきゃいけないんだった。
今日は確か体育館倉庫の備品のチェックだ。


「めんどくさいなー、早く部活行きたい。」
「俺も!」


思わず漏らした声に同じ体育委員の福田くんが相槌を打ってくれた。
福田くんは確かバスケ部だ。バスケ部だったら委員会終わった後すぐ部活行けるじゃん。
福田くんもそのつもりらしくて、もう練習着に着替えてあった。
あーあー、私はここからグラウンドまで行かなきゃいけないっていうのにこのやろー。


「うーし、さっさと終わらすぞー。」


同じく体育委員の日向先輩もめんどくさそうにチェックを始めた。
福田くんによればバスケ部のキャプテンらしい。日向先輩も早く部活に行きたいのか、やっぱり練習着だった。


「遅い!あと10本!!」


体育館に笛の音と、テキパキとした指示が響く。
驚いたことに指示を出しているのは女の人だった。制服着てるから誠凛の生徒だ。すごいなあ、女で、学生なのにバスケ部のコーチやってるのかな。かっこいい。


「黒子くん寝るなーー!!」
「!?」


鳴り響いた怒号に思わず作業していた手をとめて声の方に振り向いてしまった。だって、今、「黒子くん」って…!
目をこらしてよく見てみると、体育館の床に寝そべっている水色の髪の毛を見つけた。
ま、間違いない、黒子テツヤくんだ…!


「あちゃー。黒子のやつまた倒れてるよ…。」
「福田くん黒子くんのこと知ってるの!?」
「え?だってバスケ部だし…」


黒子くん、バスケ部だったんだ…!
雰囲気からなんとなく勝手に文学部とか、文化系の部活だと思ってた…。ちょっと意外だったけどバスケする黒子くん……きっとかっこいいんだろうなあ。


「な、何で寝てるの?」
「黒子すぐへばっちゃうんだよ。カントクー、俺保健室連れていきます!」
「福田くん…お願いするわ。」
「あ、あのっ!わ、私も行く!」


気付いたら元気よく挙手していた。














つい、勢いで保健室まで付き添いに来てしまったけど…どうしよう…!?
ここまで黒子くんを運んだ福田くんはもう部活に行ってしまったし、保健室の先生はいないし、目の前で黒子くん寝てるし……私はいったいどうすれば…!?
と、とりあえず今のうちに黒子くんの顔見ておこうかな……って私は変態か!


「………!」
「!!」


チラリと横になっている黒子くんに視線を向けたところで、タイミング悪く黒子くんがパチっと目を開けた。
必然的に重なる視線。あまりにも急な出来事で逸らすこともできずに、そのまま固まる私。


「何で…名字さんが……?」
「あ…!えっと、私体育委員で体育館にいて……」


体育委員で体育館にいたからって今ここにいる理由にはならないのに…あああどうしよう何て言おう!?


「それは知っていましたが……」
「えっ……?」


え、私がいること知ってたの?……っていうか、布団を顔にかぶっちゃったんだけど黒子くん………


「…かっこ悪いとこ、見られてしまいました。」
「っそ、そんなことない!」


黒子くんが自分のこと「かっこ悪い」なんて言うものだから、つい反射的に否定してしまった。
だって、黒子くん、かっこ悪くなんてないもん…!


「倒れるまで頑張ってたってことでしょ?」


私も運動部でずっとやってきたからわかる。倒れるまで練習頑張るなんてなかなかできることじゃない。
そして倒れるまで頑張れるってことは、そこまで一生懸命に部活に打ち込んでるってことだ。


「そこまで、何かに頑張れるってすごいことだと思う。かっこいいよ。」
「!」


言ってから後悔した。
な、何私サラっと「かっこいい」とか言っちゃってんの私…!いや、そりゃもちろん黒子くんはかっこいいけれども!何本人目の前にして言っちゃってんの!


「ありがとうございます。」


流してくれと全力で願ったけど、黒子くんはかぶっていた布団から顔を出してはにかんだ。ちょ、今の破壊力半端ない…!


「僕も…何かに頑張ってる人は素敵だと思います。」


更に続けた黒子くんの言葉が誰に向けたものかはわからないけれど、私は一回だけ頷いた。
うん。頑張ってる黒子くんはかっこいいよ。






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