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黄瀬くんを見てるだけで幸せ

神様ありがとう。
何の取り柄もないこの私に、イケメンモデルと同じ学校で同じクラスという素晴らしい境遇を与えてくれて。
私の席は黄瀬くんの斜め後ろ。とても見やすい位置で毎日私の目は幸せです。眼福です。黄瀬くんはもしかしたらこの角度が一番かっこいいんじゃないだろうか。


「あのさ…」


いや、やっぱ正面から見たらやばかった。イケメンすぎる。この世にこんなかっこいい高校生がいていいのかな。
…ん?何で正面?正面から見る度胸なんて私にはないはずなのに。


「名字さん…」
「……へっ!?」


何故なら黄瀬くんが私に話しかけたからだった。
え、うそ何これ夢なのかな。そもそも黄瀬くんが私の名前知ってたことに驚きと嬉しさを隠せない。


「あんま見られると…その、照れるっス。」
「!!」


な、なんと…!
こっそり盗み見てたつもりだったのに本人にバレてしまっていたとは…!どうしよう、穴があったら入りたい。こんなのストーカー女と思われてもしょうがないじゃんか。


「ごっ、ごめん!これからは、その……わからないように見るから…!」
「ぷっ……結局見るんスね。」
「う……」


だってかっこいい人がいたら目で追ってしまう。男の人だって美人がいたら目で追ってしまうでしょ?それと同じ。人としての本能はきっと抑えられない。


「あ、別に見るなって言ってるわけじゃないんスよ。」
「!」


イケメンのうえに優しいとか、パーフェクトすぎやしませんか。モテない理由が見つからない。


「ただその…あー……名字さんは見てるだけでいいのかなー…って。」
「? 見てるだけで幸せです…。」
「あーもう何でそういうことサラっと言うんスか!」
「あっごめん…!」


確かに他の女の子は差し入れ渡したり連絡先聞いたり、尊敬する程積極的にアプローチしてるけど私にそんな勇気はないし、本当に見てるだけで幸せなのだ。まさか本人に指摘されるとは思わなかったけど。


「つまり俺が言いたいのはさ、もっと積極的にきてほしいなー…みたいな…」
「え?」


見てるだけなんて陰湿だからさっさと告って振られろってこと?いやいやそんなの絶対無理!


「あー…や、やっぱ今のなしで!」
「え、あ、うん。」


何だろう、今日の黄瀬くんはなんだか様子がおかしい。言葉がしどろもどろだし視線もあちこちに泳いでる。そんな姿も素敵だなって思っちゃう。


「名字さん次の土曜日暇っスか?」
「うん、バスケ部の練習試合見に行くつもり…だよ。」
「!」


次の土曜日はバスケ部の練習試合がある。女子達の間ではバスケ部の試合情報は共有されている。
試合も見に来てたのかとか、引かれちゃったかな…。


「…試合終わった後も残ってくんないスか。」
「え、何で?」
「あーもう…!何なんスか名字さん!俺のこと好きなんじゃないんスか!?」
「へっ!?」


そ、そりゃもちろん好きだけど!本人に言われるってどんな展開?


「すっげー見てくるくせに全然話しかけてくれないし!試合見に来ても終わったら差し入れとかしないでさっさと帰っちゃうし!」


え、何だろうこれ。黄瀬くんは直々にファンとしてのダメ出しをされてるのかな。


「俺はもっと名字さんとお喋りしたいんスけど。」
「…え!?」


顔を真っ赤にしてそんなことを言われたらファンとして…いや女子として期待してしまう。


「…ダメっスか?」
「…ううん。差し入れ、持ってくね。」


もう少し、積極的にいってもいいのかな。
照れた黄瀬くんの顔をしっかり瞼に焼き付けてそんなことを思った。







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