08
生まれて初めて行った合コンは、りっちゃんのおかげで普通に楽しかった。
みんなはお酒飲んでたけど私は飲まなかった。お酒飲むと成長止まるって聞いた気がするし。私は身長に関してまだ諦めていないのだ。
「私達2次会行くけど名前どうする?」
「私は遠慮しとくよ。」
「じゃー優斗送ってやれー。」
「おー。」
りっちゃんは気に入った男の子となんだかいい感じだ。よかったな。
優斗くんは話してみたら私と同じように人数合わせで呼ばれただけらしい。同じような境遇で勝手に仲間意識が芽生えてしまった。
「ここまででいいよ、ありがとう。」
「ん、じゃーね。」
さすがに今日会ったばかりの人に家の目の前まで送ってもらうのは悪いから、近くの信号のところで別れた。
うーん……普通に楽しかったけど……うん、終わってみればそれだけかなあ。彼氏彼女の関係を求めようとは思わなかった。話も盛り上がったけどなんとなく物足りないって思ってしまうのはバレーの話ができなかったからなのかな。
「名前ちゃん今の誰?」
「! 侑くん。」
信号を渡り切ったところに侑くんがいた。今日も治くんのところに泊まるのかな。
「友達……」
「嘘や。何でこんな時間に一緒におるん。」
「飲み会してて、送ってくれただけだよ。」
「もしかして合コン?」
「う、うん。」
「……」
今日初めて会ったけど「友達」と呼んでいいはず。聞かれたことに正直に答えたら侑くんは黙ってしまった。なんだか少し怖い。
「なあ名前ちゃん……それちょっと酷ない?俺がこんなアプローチしとんのに他の男探すとか何なん。」
や、やっぱり怒ってる……!いつもニコニコしてる侑くんに無表情で迫られるとどうしたらいいかわからない。でも、誤解は解かないと。
「迷惑やったらはっきり言ってや。」
「迷惑じゃないよ。」
「じゃあ何で合コンなんか行ったん。」
「友達に、ほかの男の人と比べてみればわかるって言われて……」
「……何が?」
「私にとって侑くんが、特別なのか……。」
「!!」
決して彼氏が欲しいと思って合コンに参加したわけじゃない。侑くんにそう思われたくなかった。
「……で、どやったん。」
「えっ……あ、考えるの忘れてた。」
「何やねんそれ!」
そういえば侑くんと比べてこうだな、とか考えなかったな。普通に楽しくて忘れちゃった。
「で、でもね、私毎日連絡とる男の子って侑くんだけだし、十分特別だと思うんだけど……」
「嫌や。それだけじゃ足りん。」
「!」
きっぱりと断られてしまった。
「マジ何なん名前ちゃん……どストレートに言わんと信じてもらえんの?」
「え、いや……」
私だって、そんな鈍感じゃないからわかってるつもりだよ。でも、もし万が一っていう可能性も拭いきれないし、私の勘違いだった場合侑くんに申し訳ないし……
「俺名前ちゃんのことが好きやねん。付き合いたい。特別になりたいってのは、彼氏になりたいってこと。」
「!!」
「おっけー?」
戸惑いながらも首を縦に振った。
これだけストレートに言われたらもう信じるしかない。侑くんは私のこと好きだって思ってくれている。理解したところで私はどうすればいいのか、全然わからないんだけど。
「……てかまだ付き合うてもないのに嫉妬とかかっこ悪……ごめんな。」
「ううん。えっと……」
「あー……返事はまだええよ。現時点で脈ないのはわかっとったし。」
今のが告白なら私はお返事をしなきゃいけない……そう思ったけど侑くんに止められた。
脈がないわけじゃ、ないんだけどな……その言葉は口には出さなかった。中途半端なことを言うのは失礼だ。
「それに、俺のこと真剣に考えてくれとるってことやんな。ありがとう。」
「!」
「……ってことで、次の日曜日デートしよ。」
「えっ」
何が「ってことで」なのかわからないんだけど……にっこり笑う侑くんには有無を言わさぬ圧力があった。
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