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「一回デートしてみなよ!」
「会社以外の姿見ないとわからなくない?」
友人とのご飯の席で赤葦くんのことを話したら私そっちのけで盛り上がってしまった。
他人事だと思って簡単に言ってくれる。でも確かに友人達のアドバイスは一理ある。
私は会社での赤葦くんの姿しか知らない。会社以外の場所で私服でデートでもしたら確信が持てるかもしれない。
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「名字さん昼飯は?」
「コンビニ。」
今思えばこうやって毎日のようにお昼ご飯に声をかけられるもアプローチのひとつだったんだと今ならわかる。
今日はコンビニ弁当の日。赤葦くんと一緒に会社を出た。……誘うなら今だ。
「あのさ、今週暇な日ある?」
「……えっ。」
「平日の定時で帰れる日でも全然いいんだけど……」
「えっと……もしかして、デート……?」
「う、うん、まあ、そうなんだけど……」
私がデートに誘ってると理解すると赤葦くんは目に見えて動揺した。まさか私が赤葦くんを動揺させる日が来るなんて。
「私、会社以外の赤葦くんをあまり見てないから……」
「! なるほど……実技試験みたいなものか。」
「そんな偉そうなものじゃなくて!」
変な感じに解釈された。その言い方だと私が赤葦くんをテストする試験官みたいじゃん。そんな偉そうな振る舞いをするつもりはない。試験だって言うんだったらそれは私にとっても同じだ。
「赤葦くんの方も、私を審査してほしいっていうか……」
「……」
「ほら、嫌なところも見えてくるだろうしさ。」
「……ありがとう。」
そんなお礼を言われるようなことじゃない。
赤葦くんだって会社での私の姿しか見てないはずだ。実際にデートしてみたら生理的に無理なところとか価値観の違いとか発見できるかもしれない。赤葦くんにも「やっぱ思ってたのと違った」って断る権利はある。
「いつにする?」
「名字さんはいつでも大丈夫?」
「うん。」
「じゃあ日曜日は?」
「大丈夫だよ。」
平日じゃなくて日曜日を提案されたことが嬉しいと思った。赤葦くんも真剣に考えてくれてる。
「行きたいところある?」
「映画観に行きたいなぁ。今月始まったミステリー小説のやつ。」
「あれ面白そうだよね。」
確か前にこの作家さんが好きだって話してたはずだ。今流行りの青春映画やアニメ映画を赤葦くんと見るのはなんか違うと思った。
「赤葦くんは?行きたいところある?」
「うん。名字さんと行きたいところたくさんあるから、じっくり考えてまた連絡するよ。」
「う、うん。」
油断してたら照れるような言い方をされて恥ずかしくなった。
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