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11

 
「カゴ持つ。」
「ありがとう。」


今日は平日だけどお互いに帰りが早くて、宮くんから連絡がきた時丁度スーパーに行こうとしてたから一緒に買い出しをすることになった。


「何か食べたいのある?」
「焼きそば食いたい。」


2人でスーパーに入ると当たり前のように宮くんがカゴを持ってくれてきゅんとして、焼きそばを食べたいと言われただけでもきゅんとしてしまった。まるで付き合ってるみたいな感覚に陥って、必死に打ち消した。
一緒にスーパーに来て部屋でご飯を食べてる私と宮くんの関係って、どう説明したらいいんだろう。
きっと宮くんにとって私はご飯を作ってくれる便利なお隣さん……一方で私はもう宮くんのことをただのお隣さんだとは思えなくなってしまった。
彼女になりたい……だなんて、おこがましい。



+++



「ひゃあー……」
「めっちゃ降ってきたな。」
「びしょ濡れになっちゃったね。」
「な。シャワー浴びてから行くわ。」
「うん。」


スーパーから出て少し歩いたところでゲリラ豪雨に襲われて家に着く頃にはびしょ濡れになってしまった。
今日も料理を手伝ってくれると言うから一度お互いにシャワーを浴びてから集まることになった。
私も濡れた服を脱いでさっとシャワーを浴びた。


「……」


なんだか、シャワーを浴びた後に宮くんに会うの変な感じだな。
自分の二の腕に鼻を近づけてボディソープの匂いを確かめる。別にどんな匂いがしようと関係ないのに。


ピンポーン


「はーい。」


自分の無意識な行動に一人照れているとインターホンが鳴った。身だしなみを鏡で確認してドアを開けた。


「……どうも。」
「どうぞー……ッ!?」


宮くんを迎え入れてすぐ、眩しい閃光が走ってゴロゴロと地響きが聞こえた。部屋の明かりが全て消えて真っ暗になってしまった。近くに雷が落ちて停電してしまったんだろう。


「び、びっくりしたー……」
「……」
「宮くん大丈夫?」
「うん。」


まだ目が暗闇に慣れなくて目の前にいるはずの宮くんはシルエットがぼんやり見えるくらいだ。
宮くんは全然動じていない。すごいな、私なんて心臓バクバクいってるのに。


「……見えへんな。」
「!?」


何を思ってか宮くんが私の手を握ってきた。


「ブレーカーどこやっけ?」
「洗面所だよ。お願いしていい?」
「うん。」


真っ暗だからっていう理由だけでは違和感を感じたもののすぐに突っ込む事は出来なくて、手を繋いだまま洗面所へ移動した。


「……ありがとう。」
「おん。」


私が脚立を使わなきゃ届かないようなところも宮くんだったら片手で余裕で届いてしまう。
電気が点いた後も宮くんは私の手を離さなかった。何を考えているかわからない表情でじっと見つめられて動けない。
洗面所はさっき私がシャワーを使ったせいで熱気とボディソープの匂いが充満していて、なんだか変な気分になってしまうような気がした。


「……やっぱ今日は帰るわ。」
「う、うん。」


このまま見つめ合ってたら何かが起きたのかもしれない。それでもいいと思ったのは私だけだったんだろうか。




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