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02

 
土曜日の部活終わり、帰り道でコンビニ弁当を買ってくたくたで家に帰る。
今日は特別お隣さんから匂いはせんかったけど台所の電気が点いとるから何か作ってはいるんやろな。
そんなことをぼーっと考えとったら何かを蹴ってまった。


「……」


納豆や。納豆が落ちとる。何でやねん。
多分やけど……お隣さんの買い物袋から落ちた可能性が高い。どうしよ。このまま放っといたら腐ってまうかもしれん。


ピンポーン


少し考えて俺はインターホンを押した。


「は、はい……?」


インターホン越しに聞こえた声は少し警戒してるようやった。一応このマンションはオートロックやからな。内側のインターホン鳴らされたらそらビビるわ。


「すんません、隣の宮言いますけど、納豆落としてません?」
「えっ、あ……ちょ、ちょっと待っててください!」


「納豆落としてません」とかどんな文言やねんと自分でも思うけど、それ以外言い様がないんやから仕方ない。
言われた通りその場で待っとると中からバタバタと音が聞こえた。そんな焦らんでもええのに。


「!」


ドアが開けられて丸い目が俺を見上げた。
お隣さんの顔を見るのは初めてや。見た感じ俺と同い年くらいの学生に見える。エプロンの上からパーカーを着とる。多分部屋の中では薄着やったんやろな……女子の無防備な姿ってええなあ。


「これっす。」
「あ、すみません。」
「蹴ったからヘコんでまったかも。」
「大丈夫です!親切にありがとうございます。」


俺が蹴ってまったせいで容器がヘコんでまったけどまあ味には変わりないやろ。
開いた玄関から出汁のええ匂いが漂ってきた。今日は和食かなあ。


「……いくつ?」
「え……21……大学3年です。」
「なら同い年や。宮っす、よろしく。」
「あ、はい、うん。名字っていいます。引っ越しの挨拶もせずすみません。」
「ううん。」


このご時世学生の一人暮らしで引っ越しの挨拶を隣人にする人は少ないやろ。


「……そんじゃまあ、何かあったら。」
「はい、ありがとうございました。」


今日初対面の隣人と話すことなんて特にない。
「何かあったら」って何やねんと自分でも思いながらその場を後にした。






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