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after7


 
ゆきと結婚することになった。きっかけは想定外すぎたけど、婚約指輪を渡す時に改めてプロポーズはした。バラ99本やシンデレラ城は本気で断られたからやめた。
ゆきの左手の薬指にはめられた指輪を見る度にニヤニヤしてしまう。結婚式は盛大にやりたいなあ。ゆきのドレス姿、綺麗やろなあ。

「なあ、ほんまにスーツやなくてええ?」
「ええよ」
「手土産持ってきたよな?」
「うん、あるよ」

楽しみなことがたくさんある反面、まずはきちんとご両親に挨拶をせなあかん。ゆきの家族とは何回も会ったことがあるし仲良くしてもらってるけど、やっぱり改めて挨拶するとなると緊張する。

「……汗かいとる」
「そりゃ緊張しとるからな」
「何度も会うてるやん」
「そうやけど……違うやんかー」
「ふふ」

車のハンドルを握る俺の手はいつになく汗ばんでいる。緊張する俺を見てゆきはなんだか楽しそうや。
ゆきのお母さんは気さくでええ人や。お父さんは数回しか会ったことないけどおっとりしてる感じやった。弟の孝太郎は俺に懐いてくれとる。今高3でバスケ部らしい。

「ツム久しぶり!」
「おー」

家に来るついでに部活帰りの孝太郎を拾うように頼まれていたから駅に寄った。相変わらず人懐こい笑顔で大きく手を振る孝太郎はまたでかくなったように感じた。高校生の成長ってすごい。

「……なんか今日ツムブサイクやな」
「は!?」
「ふふ、緊張してんやって」
「何で?」
「何でって……」

孝太郎は緊張が現れてる俺の顔を見てブサイクと言いよった。一応イケメンバレーボール選手で通ってんすけど。

「あーーわかった!『娘さんを僕にください』言うんか!?」
「……そうデス」
「わはは、そんな緊張せんでええのに!母ちゃんも父ちゃんもチョロいで!」

そんなん家族やから言えるんやろが。温厚なお父さんも、いざ娘が結婚となったらわからんやろ。仮に俺に娘ができたとしたら絶対嫁にいかせたくないと思う。孝太郎の能天気さに少しイラッとしながらも、救われたのも事実だった。


***


「おかえりゆきー!いらっしゃい侑!」
「ただいま」
「お邪魔します」
「侑くん、孝太郎のお迎えありがとう」
「いえ全然!」

頭の中でシミュレーションしまくっていたらあっという間に家まで到着して、お母さんもお父さんもいつも通り歓迎してくれた。

「プリン貰たでー!」
「あらほんま?」
「ごめんね気を遣わせちゃって」
「あ、いえ。美味いらしいんで食べてください」

孝太郎に俺の渾身の手土産を勝手に持っていかれた。「娘さんと結婚させてください」と言う時の手土産の重さわかっとんのか。

「あれっ、ゆき指輪しとるやんか!プロポーズされたん?」
「うん」
「そっかー!良かったなあ!」
「うん」

いやいやそれ先に言っちゃダメなやつ……!!手土産持ってきてたり身だしなみ整えてたり、改まってアポとって来た時点で察してたのかもしれんけど。

「侑くんありがとう。幸せにしてやってな」

お父さんまで受け入れるのが早すぎる。俺めっちゃシミュレーションしてきたのに。万が一お父さんが認めてくれなかった場合まで想像してたのに。思ってたんと違いすぎる。

「侑のパパママと早く会いたいわー!お食事会はいつ?」
「まず私が挨拶しに行かんと」
「えー……お母さん電話で言っちゃいそうやわあ」
「あかん」
「はいはい」
「結婚式楽しみやなあ。俺のスピーチとかないよね? 緊張するから早めに言ってね」
「なーなーハワイで結婚式やろうや!」
「……」

俺そっちのけでどんどん会話が弾んでいく。もう……何やねんこの家族。

「はああ……」
「どしたん侑?」
「俺の緊張返してください……」
「何やねん今更ー!ご飯食べてきや!」
「ありがとうございます」

拍子抜けの展開に少し釈然としないものの、この人達が家族になるんやと思うと感慨深かった。結婚ってすごい。ゆきの幸せは家族の幸せや。絶対に悲しませたりなんかしないと、改めて心に誓った。



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