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after2


 
「え……ええんすか!」
「うん」

思わず大きな声が出てしまった。何故なら明日の放課後デートはどこ行こうかって話していたらゆきさんが家に誘ってくれたからや。ゆきさんの家には一回行ったことがあってその時も緊張したけど、恋人として彼女の家に訪れるのはまた全然心持ちが違う。

「お母さんも会いたがっとるし」
「お母さんに話しとるんすか?あ、別に全然ええんやけど!」
「なんかバレてた。彼氏できたやろって。浮かれてたんかな」
「!」

ゆきさんが親に彼氏のこと話しとるなんて意外やと思ったらバレてたらしい。母ちゃんってそういうとこ鋭いよな。そしてサラッと浮かれてたという事実を知らされてめちゃくちゃ嬉しい。
ゆきさんのお母さんは気さくでええ人やった。とはいえ、彼氏として会うからには礼儀を欠いたらあかん。今度こそちゃんと手土産を持っていかんと。


***


「お邪魔します!」
「ただいま」

そして翌日の放課後、緊張しまくってゆきさんの家に足を踏み入れたところ、中はしーんと静まりかえっていた。靴も出ていないし、人の気配がない。

「……お母さん、買い物行ってるって」
「あ、そうなんすか」

スマホをチェックしたゆきさんがボソッと呟いた。お母さんおらんのか。彼女の親に会うというミッションが延期されたことにほっとしたのも束の間、より重大な事態に気付いてしまった。ゆきさんの家で、ふたりきりっていうシチュエーションやんか。

「私の部屋、2階やから……」
「え、へ、部屋入ってええんすか!」

まさかゆきさんのお部屋に行けるなんて思ってなかったから心の準備が間に合わない。恋人と部屋でふたりきりなんてイチャつき放題やんか。ええんか……イチャついてええんか。

「……リビングやと、孝太郎帰ってきたら煩いやんか」
「!!」
「孝太郎、侑とゲームしたい言うと思うし……」
「孝太郎に俺を取られたないってこと……?」
「! 意地悪せんでや」

ゆきさんは俺の言葉を否定しなかった。つまりイチャつきたいのはゆきさんも同じってことでええんか。顔赤くしちゃってほんまかわええ。今すぐ抱きしめたい。こんな感じで部屋でゆきさんとふたりきりになって、俺ちゃんと我慢できるやろか。

「お、お邪魔します!」
「玄関で言うたやんか」

神聖なゆきさんの部屋の前でもう一度挨拶をすると笑われた。ゆきさんの部屋はシンプルで、だけどちゃんと女の子らしいお部屋だった。あまりジロジロ見たらあかんと思うけどどうしても見てしまう。

「ここ座ってええよ」
「あ、ハイ!」

促された場所に座る。背後にベッドがあってなんとなく落ち着かない。ええ匂いする。やばい。

「……」
「……」

ゆきさんが黙って俺の隣に座ってきて、俺の緊張はピークに達した。手ェ出してええんか。がっついてきもいとか思われんか。恋人同士なんだからあかんことはないはずや。でも、どこまでしてええんやろか。さすがにまだエロいことはしない。ちゅうまでならええかな。いやでもちゅうだけで我慢できるかわからんしな……。男らしくリードしようとは思うけど嫌われたくない気持ちが強すぎていろいろ考えてしまう。
チラリとゆきさんを見てみたら、俺と同じように緊張した様子で俯いていた。そんな表情されたらもう抑えられない。

「だ、抱きしめてええすか!」
「……うん」

いちいち聞くなんて慣れてないやつみたいだけど、今の俺にそんなん気にしてる余裕はなかった。抱きしめる動作もぎこちなくなってしまった。めっちゃダサい。
心臓がバクバクと煩く鳴っている俺の胸板に頬を寄せるゆきさんがめちゃくちゃかわええ。ちゅうしたい。してええかな。怖がらせてしまうやろか。

「……侑」
「!」

腕の中のゆきさんが俺の名前を呼んで見上げてきた。この至近距離でそのアングルはとてつもない破壊力や。

「最初の時みたいに、ガーってきてくれてええのに」
「!!」

あーもう……そんな感じで誘ってくるなんてずるい。好きすぎる。

「ん」

俺は昂る気持ちを出来る限り抑えて、出来る限り優しくキスをした。ただ唇と唇を合わせるだけの行為なはずなのに、ゆきさんとするキスはとてつもなく神聖なものに思えた。こんなんずっとキスしてられる。キスしたら歯止めが効かなくなってそれ以上のこともしてしまうと思ったけど、いらん心配やった。キスだけでめちゃくちゃ幸せで満たされる。こんなん初めてや。薄く目を開けたら名前さんの長い睫毛が震えていた。かわええ。好き。

「あーー!ツム来とるーー!!」
「「!?」」

キスに夢中になっているところに孝太郎の元気な声が響いて、ドタバタと足音が聞こえてきた。一気に現実に引き戻されて慌ててゆきさんと距離をとる。

「やらしいことしてるかもやからちゃんとノックするんやでー!」

続いてお母さんの声が聞こえた。どうしようもなく照れくさくなってなんだか居た堪れない。

「……ごめん」
「いや……」

逆に邪魔が入ってよかったのかもしれない。こんな幸せな時間が延々と続いたらフニャフニャのポンコツになってしまいそうや。



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