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(友人視点)

「ゆきさんお疲れ様です!!」
「……」

噂のイケメン双子の片方がおたまリレーを終えた私の友人に駆け寄った。それはもう犬のように。

「あああ体操着のゆきさんかわええ!!」
「部活ん時と変わらへんよ」
「ハチマキリボンにしてる!かわええ!」
「侑、あんま大声出さんで」

何やねんコレ。ゆきはバレー部のマネージャーだから接点はあるんやろなとは思っていたけど、予想以上の懐きっぷりやん。
そりゃもちろん、友人の私から見てもゆきはかわええ。けど口ベタやしコミュ障なとこがあるから、男子からしたら高嶺の花で声をかけるのもためらってしまうもんや。そんな男子を私は何人も見てきた。

「俺この後借り物競走なんで見てください!」

イケメンだからこそゆきにも物怖じせずガンガンいけるんやろか。周りの男子の羨ましそうな視線と女子のそわそわした視線が集まっている。

「え、今の宮侑の方?」
「うん」
「なんかイメージと違った。めっちゃ懐いとるやん」
「侑は人懐っこいんよ」
「いやいや、うちの友達この前試合見に行ったらめっちゃ睨まれた言うとったで」
「……バレーの時はたまにピリピリする」
「まあ喜んでたけど」
「……」


***


ゆきは宮侑に言われた通り借り物競走を見たいと言って移動した。宮侑は大勢の女子の中からゆきを見つけると嬉しそうに手を振った。周りの女子がざわざわするが当の本人はスルー。
まさかゆきが宮侑とこんな仲良くなっていたとは。そもそも人見知りのゆきが男子と目を合わせて喋ること自体がレアや。さっきの様子を見る限り宮侑に対して緊張してる様子もない。
宮侑はゆきのことが好きなんやろか。もし付き合うたりしたら稲荷崎のビックカップル爆誕やな。そういえば借り物競走には毎年恒例で「好きな人」と書かれたお題が混ぜられている。派手な告白をしたくてそれ狙いで出場する人もいる。宮侑がそれ引いたらおもろいな。

「ゆきさん一緒に来てください!」
「紺野、一緒に来てもろてええか?」

まあそんな漫画みたいなこと実際起こるわけないかと思ったらこの胸アツ展開である。
ゆきを呼んだのは宮侑と北くんだった。北くんは名前と中学が一緒で、ゆきと一番仲がええ男子や。そこに恋愛感情はないと思っていたけど……これはわからなくなってきた。

「お前のお題何や?俺のは紺野しかおらへんから他当たりや」
「俺やってゆきさんしかいません!」

けど「好きな人」のお題は毎年ひとつだけのはずや。2人が引いたお題をゆきと一緒に覗き込む。宮侑が引いたお題が「ミスコン優勝者」。北くんが引いたお題は「異性の親友」やった。

「侑、私ミスコン出とらんよ」
「え!? ゆきさんがミスやなかったら誰がミスなんすか!!」
「誰やっけ?」
「3組の牧田さんやないっけ?ほら、あそこ」
「ブスやん!」

うわ……宮侑は人でなしっつー噂は本当だった。牧田さんかわええやんか。女の子に対して大声で「ブス」はないわ。こいつゆき以外の女子はみんなブタくらい思ってそうで恐ろしい。

「なら俺が連れてくで」
「ほんまに私でええの……?」
「うん」

一方ゆきと北くんの間にはほわほわとした空気が流れている。ゆきは北くんに「親友」と思われてるのがわかってめちゃくちゃ嬉しそうや。もうこのふたり付き合ったらええのに。


***


次にゆきが見たいと言ったのはパン食い競走。そこで順番待ちしていたのはやっぱり噂のイケメン双子。あれは……宮治の方やろか?遠目だとほんまわからない。

「あれどっち?」
「治」
「ようわかるね」
「マネージャーやからね」

双子を難なく見分けたゆきは得意げや。宮治の方は名前を見つけても大きく手を振ったりはせず、ぺこりと軽く頭を下げた。
スペック高すぎの宮兄弟はもちろんモテモテなわけだが、宮治の方が人気がある印象や。まあ宮侑があんな感じやかならなあ。女の子だったら基本的に好きな人からは優しくされたいやん。……たまに罵ってほしいと言う強者もいるけど。

「食いしん坊の方が治」
「いやそれ見た目でわからへんから」

宮兄弟の見分けがつかない私に教えてくれたけど、食いしん坊とか見た目でわからないから。もっと他に特徴あるやろ。

「うわ、めっちゃ速いやん!陸上部より速いやん!」
「うん」

スタートの合図とともに一斉に走り出し、序盤で宮治が抜きん出た。陸上部より速いんですけど。それを見てゆきは得意げや。かわええなコイツ。しかし何を思ったのか、宮治はパンの前で急停止してしまった。

「ふざけんな治はよ選べや!!」
「あんぱん……チョココロネ……焼きそばパン……」

どうやらどのパンを食べるかで迷っているらしい。

「なるほど、食いしん坊や」
「な。かわええやろ」
「……せやね」

ゆきが言った「食いしん坊」の意味がわかった。こういうところが女子の母性本能くすぐるんやろな。ゆきもかわええって言ってるし。

「治、お疲れ」

その後結局巻き返して1位は宮治だった。他の走者から分け与えてもらったパンを両腕に抱えて宮治はご満悦の表情でこっちに近付いてきた。

「……これあげます」
「ええの?ありがとう」

そしてその中の一つをゆきに手渡した。宮侑と顔は同じやけどゆきに対する態度とか雰囲気は全然違う。こっちの方が落ち着いている。宮侑の時よりゆきも自然体や。

「紺野さんチョココロネ好きやもんな」
「うん、好き」
「……」
「あんぱんは?」
「? 好き」
「……」

あ、これはゆきの「好き」に萌えてる。表情あんま変わってないけど確実に萌えてる。萌えるからわざと「好き」って言わせてる。何やねん、結局宮治もゆきのこと大好きやんか。
あの宮兄弟をこんな風に手懐ける女子なんて、ゆきしかおらへんやろなあ。そして逆もまた然り。人見知りのゆきが部員とこんなに打ち解けてるなんて思わなかった。この2人もゆきと仲良くなりたいと思って歩み寄ってくれたんやろな。

「次はな、尾白くんの障害物競走見たい」
「ゆき、部活大好きなんやなぁ」
「うん、大好き」

はい「大好き」頂きました。こんなんあの双子が聞いたら卒倒するんやない?聞かしてあげへんけど。



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