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after2


 
「明日なんだけどさ、うち来ない?」
「!」

さよりと付き合って2週間。部活の日は家まで送り、部活が無い日の放課後や土日にデートするのがいつものパターンになってきていた。行く場所は飲食店や駅前の複合施設が多い。そして今回、満を辞しておうちデートに誘うとさよりはあからさまに動揺した。

「あー……一応言っとくけど、そういうことはしないから」
「う、うん」

国見ちゃんが変なことを吹き込んでくれたおかげで変に警戒されてしまっている。そりゃまあ何もしないわけではないけど、本格的にやらしいことはまだしないつもりだ。夕方には親も帰ってくるだろうし。

「徹さんのお母さん綺麗だよね」
「さよりに会えるの楽しみにしてたよ」

バレー部のマネージャーとして、うちの親とは元々面識がある。さよりと付き合うことになったと報告したら「でかした」と絶賛された。マネージャーとして頑張るさよりの姿は父母会の親からも評判が良かったらしい。ふたりきりの時間が減るのは残念だけど、彼女が親に気に入られるのは嬉しいものだ。


***


「お! さより来た!」
「!?」

翌日。誰もいないはずの家にさよりを招き入れるとゲーム機を手に持った猛が出迎えてくれた。何でお前がいるんだよ。

「ドーナツあるぞ!食う?」
「あ、ありがとう」
「……」

猛越しにリビングのドアから顔を覗かせてニヤニヤと笑みを浮かべる兄夫婦を見つけた。今日さよりを家に呼ぶことは母ちゃんにしか言っていない。先週沖縄に行ったらしいからお土産を持ってきただけなんだろうけど、俺が彼女を連れてくるって知ってわざとこの時間帯を選んだに違いない。

「さよりゲームやろーぜ!」
「えー、私ゲームわからないから徹さんにやってもらってよ」
「徹よえーんだもん!」
「何だと!」

結局リビングで兄家族と一緒に団欒することになった。もちろん自分の家族と彼女が仲良くしてくれるのは嬉しい。でも元々バレー教室の関係で面識はあったし、今じゃなくてもいいじゃん。

「いやーごめんね?邪魔しちゃって」
「思ってもないくせに……」

ほんと、こんなの邪魔以外の何物でもない。謝るくらいなら早く帰ってほしい。

「徹すぐえろいことするからカンシしてやってんだぜ!」
「なっ……お前に監視される筋合いないから!そもそも俺とさよりはえろいことしていい関係だし!?」
「!?」
「えー!さよりは徹にえろいことされてもいいのか!?」
「へっ!?い、いや……」
「はいはいそこまで。さよりちゃん困ってんじゃん」

大人げなく猛と口論する俺を兄ちゃんが諫めた。「誰のせいだよ」という文句は飲み込んで大人しく口を閉じる。こんなかっこ悪い姿見せるはずじゃなかったのに。くそ。

「猛帰るぞー。旅行の土産渡しに来ただけだからな」
「えー!」

ようやく帰ってくれるみたいだ。帰れ帰れ!俺は煽るように猛達に向かって舌を出した。

「さより、嫌なことされたら大声で叫べよ!」
「変質者扱いするな」
「母さんもうすぐ帰ってくるから、変な気起こすなよー」
「わかってるよ!」

言われなくても大事な彼女なんでね、元々えろいことするつもりはないし。ただ、彼女とふたりきりになってイチャイチャしたいって思うのは健全な男子高校生として当たり前の感情だ。今日はさよりにいっぱい触れたい。たっぷり堪能したい。これは決して"えろいこと"には含まれない。

「……」
「……」

兄家族が帰って家の中が一気に静かになると変な沈黙が続いた。さよりは気まずそうに視線を泳がせてなかなか俺を見てくれない。

「猛くんに変なこと言わないでよ……」
「恋人とイチャつきたいっていうのは変なことなの?」

大人げないとはわかっていても拗ねた態度をとってしまう。猛に言ったことは何も変なことじゃない。さよりは俺とイチャつきたくないのかよ。

「そういうことじゃなくて、小学生の猛くんにそんなこと言わなくていいって話……」
「さよりはイチャつきたくないの?」
「!」

ぐっと距離を詰めるとさよりは後ろに逃げようとしたから腰を引き寄せた。

「家に来てくれたってことはそれなりの覚悟があったんでしょ?」
「……!」

本気で手を出されたくない思っていたらそもそも家まで来ないはずだ。国見ちゃんのせいで警戒されまくってまだ手を繋ぐまでしか出来てないわけだけど、今日はキスする覚悟で呼んだ。今はもう誰も邪魔する奴はいない。いい加減おあずけは解除してくれてもいいんじゃないかな。

「あ、あの、そういうことはしないって……」
「そういうことはしないけど、こういうことはするよ」
「ん……」

顔をゆっくり近づけていって、さよりの照れ隠しを無視してキスをした。付き合う前に夢と現実を間違えて無理矢理キスしてしまったわけだけど、あの時とはまた違った感触がするような気がした。
あんなに戸惑っていたくせに、一度触れてしまえばさよりは大人しくそれを受け入れた。ぎゅっと目を瞑って俺のキスに応えようとしてくれるさよりが可愛くてたまらない。とはいえあまりしつこくはせずに数秒で離すと、真っ赤な顔をしたさよりが俺を見上げていた。

「嫌なら大声出すんじゃないの?」
「……嫌じゃ、ないもん」
「ッ……」

俺の彼女が可愛すぎて思わず天を仰ぐ。

「……じゃあもっとしよ」
「!」

今日はキスまで……今日はキスまで……。必死に自分に言い聞かせながら、さよりの唇を味わった。



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