53
そろそろ秋になります。
そう、つまり
もうここを出ることになりました。
辨助たちの鬼ごっこは、結局最後には私が折れ
辨助たちに稽古をつけてやるという名目で自分もいい経験になるだろうと師匠というやつをやってみた。
流石と言うべきか、辨助は中々稽古の付けがいがあった。
そして辨助の仲間たちには私の事を師匠っ!と慕っていた。
だって、ほら、今後方で私を呼ぶ声が聞こえるし。
「じじょ〜〜!!」
「オ、オイラじじょうのごと"わずれねぇ"〜〜」
随分と濁点の多い声だけど、それが愛しくてたまらねぇ…
畜生、情なんて入れるもんじゃねぇぜ。
キラリと浮かんだ涙を指でっさとぬぐう。
「名前ちゃん、何だかんだ言って稽古つけてたもんね。」
隣でサブが我が弟子たちを振り返りながら笑っている。
黙れい、俺ぁ今涙で前が見えねぇんだよ。
師弟子愛って素晴らしい!
もう、我が弟子たち最高!
皆良い奴だしさ!可愛いい奴らだよ、畜生!
私の中で初めて昼ドラを見た時並みの大きな師弟子愛ウェーブが来ている
ふふ、私初めて昼ドラウェーブが来てた時は
父さんや兄さんに所構わず昼ドラごっこをっふかけてたんだっけ…
貴方、その女は誰!! なんて、スーパーのおばさんと話してる父さんに言ってたっけ。
もう戻れない場所への懐かしさや後ろで泣きながら「じじょ〜、じじょ〜」と一見「侍女」と言っているように聞こえる叫び声を上げている弟子たちにまた目が潤む
『っく……』
「名前が別れ際に泣くなんてな…」
「なんだか珍しいな。」と空気を読まない発言をする重弥さん。
確かに、思い返せば別れ際に泣いたのは初めてかもしれない。
っく、これも師弟子愛の力っっ!!
あぁ、我が弟子たちよ!たくましく大きくなってくれよ!!
私が俯いて涙を拭いていると頭の上に出来る影
『ん?』
「泣くな!名前!!」
顔を上げるとそこには、顔を涙でグチャグタにした辨助がいた。
『べ、辨助…!』
「った、たとえ、お前がっ、俺達と一緒に天下をとれなくとも……き、きっと、いつの日か…こ、このおれさまが、いつか……て、天下をおおおぉおぉぉぉ!!!」
『辨助の馬鹿野郎おおぉぉぉ!!!』
なんて事だっコイツこの感動の別れのシーンで、シーンでっ!!
そして私の渾身のパンチでK.Oした辨助をおいて私たちは旅に出た。
キミ達と私の別れには丁度いい
54/63
prev | next
back