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そろそろ、私たちも城を出ようなんて話が出ている今日この頃。
どうやら、国親様が私を引きとめているみたいだ。
確かに、やーちゃんは日に日に男の子らしくなっている気がする。
釣り竿を肩に担いで私の所に釣りを誘いにくるのはもう日常と化した。
う〜ん、男らしいぜ。
確かに後ちょっとなんだよなぁ〜
「名前ちゃん、考え事とは余裕だ、っね!!!」
『うっわ!!』
考え事をしていた私に突然襲いくる攻撃を慌てて受け止める。
ちょ、テメェ、サブどっから湧いた!?
一人で鍛錬していたのに、突然のサブの攻撃で何故か手合わせになってしまった。
まぁ、確かに考えごとしてましたよ、だけど、突然は酷いよ。
「名前ちゃんも大分強くなったよね、もうそこらへんにいる兵より強いんじゃないの?」
え?それ本当?
『お誉めにあずかり光栄ですっ!!』
サブの言葉にニヤリと笑って刀を構えなおして攻撃する。
人を殺したことは、実は一度だけある。
人を殺すのは、すごく怖かったし恐ろしかった。
だけど、戦闘はごく楽しくて、始終笑っていた。
これって矛盾してるかな?
しばらくサブとやり合って勝敗は、私の負けで終わった。
悔しいな…
爪が手のひらに喰い込む程拳を強く握る。
よし、もう少し鍛錬しよう!!
これをバネにもっと強くなろうと、武器を持ち直した私に小さな声がかかる。
「……………………名前」
振り向くと何時の間にいたのかやーちゃんが縁側に俯いて座っていた。
『あ、やーちゃん。』
彼の横には釣り竿が置いてあり釣りに誘いに来てくれたのかな?と近寄る。
だけど、やーちゃんからは何の反応も返ってこづ、首を傾げる。
『やーちゃん?』
声をかけるとゆっくり顔を上げるや―ちゃん。
そこには泣きそうな顔があり、驚いて思わず後ずさる。
『ど、どうしたの!?』
「名前は…何故戦うのですか…?」
ッグイと私に顔を近づけて迫ってくるやーちゃんに戸惑いつつ口を開く。
目の端に、こちらの話を伺っているようなサブが見えた気がした。
『……私は重弥さんたちの役に立ちたい、山賊狩りとして彼らの傍にいたいから。
それに、私はいつも守られてるから、だから、私が守れるようになりたいから、だから私は戦うよ。』
そう、はっきり言えば、悲しそうに顔を歪めるや―ちゃん。
「では、では…!どうして、笑いなが名前は戦うのですか!?」
懇願するような顔で私を見てくるやーちゃんに目を反らしそうになる。
駄目だ!!今、目を反らしたら!!
何故か目を反らしてはいけない気がして自分に喝をいれる。
『……戦うのは…楽しい。』
私がそう言った瞬間、やーちゃんの顔が絶望感に染まる。
『でも、人を殺すのは嫌。』
その言葉に安心したような、顔をするやーちゃん。
「そう、です、か……」
そして力尽きたようにヘロヘロと縁側に座るやーちゃん。
もしかして、私が快楽殺人者にでも見えたのか…?
脳裏に私を殺そうとしたあの男の顔が浮かび、身体がブルリと震える。
『私は、自分の身も私のまわりの人も守れるようになりたいんだ。』
そう言って笑えば同じように笑いかえしてくれるやーちゃん。
『あ、そうだ、強くなったらやーちゃんも守ってあげるっ!』
こんな可愛い子きっと賊に狙われるよね!
そんな時は、私がお守りするぞーと彼に伝えれば。
ハトがマメ鉄砲くらったような顔をしてから顔を真っ赤にさせるやーちゃん。
「俺は男だ!自分の身も名前のことも俺が守る!!!」
女は引っこんでろ!!とそう男言葉で吐き捨てて言って、プンスカ怒って行ってしまったやーちゃん。
何で行き成り怒ったの?
ていうか、男言葉全開………
近くにいたサブに茫然としたまま頭を傾げると
「あちゃー名前ちゃん、男にあれは言っちゃだめだよ。」と苦笑いで返された。
男心はよくわからない
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