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今日は土砂降りだった。


季節は梅雨入りして私たちが近くの村で雨が止むまで滞在していた時だ。

私はその時、雨が弱まったので村の近くの林に花を摘みに行く帰りに
突然の土砂降りに襲われ、大木の下で雨宿りをした時だ。


「早く止め。」


隣、正しくは私の隣にある身の丈程ある木の根の隣から声が聞こえる。

それは、まだ小さな子供の声で安心する。

一応、小太刀は胸の中に隠し持っているが、今の私の実力だと大人には完全に勝てるとは言えない。

だから、私は安心して木の根から顔を出して声の主を見る。


「っな!誰だ!?」


そこには、銀髪のだけど変わった前髪の男の子がいた。

いや、本当前髪すごいな、うん。


『あれ?村の子じゃない。』


けれど、その顔に見覚えがなく服装も村の子供とは違い、袴をはいていた。


「貴様は、そこの村の者か?」
『え?あぁ、はい。』


一応あの村に住んでいる訳ではないが今はあの村にいるから『はい』と答える。

話方からして、彼はそれなりの身分の家の子みたいだ。

それに、彼の後ろには馬がつながれている。

うん、やっぱり身分の高いとこの子だ。


私が答えたっきり、彼との間に気まずい沈黙が落ちる。


『え、えっと、なぜここに?』
「貴様に言う必要はない、貴様こそ何故このようなところにいる」
『あ、えっと、花を摘みに。』


摘んだ花を彼に見せるとまた沈黙が落ちる。

気まずい。


「……村の者はいつも遊んで暮らしているのか、、」


そう溜息混じりに呟いた少年

遊んで暮らしている……?


『そんなわけない。』


この少年は、私のせいで農民が遊んで暮らしていると勘違いしているようだ。


農民が遊んで?そんなわけないじゃないか。
私は今まで旅の中で色んな村を見てきたから。


「なぜ?現に貴様は花摘みをしているではないか。」


私が言った言葉に怪訝そうに顔をゆがめて私の摘んだ花をみながら言う少年


『……これは、病気のおばあちゃんに渡すんです。』


私たちが寝泊まりさせてもらている長者の家には、病気で寝たきりのおばあちゃんがいる。

おばあちゃんには、体を起して外に出るほどの元気がない。

だから、私がこの村に来た時に見つけた綺麗な花を摘みに来たのだ。


『それに、仕事はこの雨の中でも大人たちはしています。
どんな人間も、必ずしも楽には生きれないんです。
だから、遊んで暮らしているなんて言わないで下さい。』


ここは、貧しい村だ。

私たちが寝泊まりさせてもらっている、長者の家も長者とは名ばかりの家で。

家の敷地は広いが、食べ物がなく、お金もない。

育てた米は全て侍が持って行ってしまうのだ。

この雨の中だって、川が増水して、田畑が駄目にならないように。

重弥さんたち、大人が一緒になって、川の増水をなんとかせき止めようと作業しているのだ。


それを遊んでいるなんて勘違いしてほしくない。

どんな人間も、楽に生きようとしてもそんな事できないんだ。


「……私が思い違いをした、すまない。」


すると、思っていたより素直な少年に慌てる。

意外と素直だな。ってか、私お侍の子に頭下げさせちゃったよ!?

私が慌てていると、ゆっくりと口を開く少年。


「あ、その、花は何処で摘んだ?わ、私も父上に持って行く。」


もしかして私、彼に気を使わせている?

そう思ったが彼は続いて、父上に土産を持って行く。と言ったので、ならいいか。

となり、気づけば小降りになっていた雨の中私たちは、花を摘みに行った。





意外と素直な彼


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