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結局、躑躅ヶ崎館を私たちは一週間ほどで出た。
まぁ、元からそのつもりだったからいいんだけどさ。
「名前殿っ!!行ってはなりませぬ!!」
さて、この子をどうしましょう。
私にしがみ付いて離れないぞ。
あれか、私子供に好かれやすいのかな?
それだったら嬉しいな。
どうやら弁丸様は佐助さんが中々帰ってこないところにやってきた私にそうとう懐いてくれたみたいだ。
まぁ、弁丸様人懐っこいから。
『ほら、弁丸様、お館様も昌幸様も困っていますよ。』
門の前で一向に私を離す気配のない弁丸様にお館様たちは苦笑いだ、勿論重弥さんたちも。
いや、サブだけはニヤニヤ顔だけど。
「嫌でござる、嫌でござる。」
ジワリと目に涙を浮かべる弁丸様。
『ほら、武士の子が泣いてはなりません。』
目元に浮かんだ涙を拭いてやると余計っぎゅっとしがみついてくる弁丸様。
『弁丸様、また私たちはこの地に訪れます。
きっと、その時には私が一番だと思う団子を土産に参りますよ。』
「、、、団子。」
ピクリと団子というキーワードに反応する。
『それに、きっとあと数日すれば佐助さんが帰ってきます。』
「、、佐助。」
またピクリと反応する弁丸様、あと、ひと押しかな。
『私がまた来るまでに沢山鍛錬して、強くなって私を驚かせて下さいよ。』
そう言って、頭を優しく撫でてやると静かに体が離れる。
「某、これから沢山鍛錬をし、名前殿を驚かせるでござる。」
『そうですか、楽しみにしてます。』
笑って、いい子いい子と頭を撫でてやる。
と、目に涙をためたまま笑い返してくる弁丸様。
やっぱりワンコだ。
こうして、また私たちの旅が始まった。
「名前は、童子の前では随分大人のようになるのだな。」
私と手を繋ぎながら言う佐和さん。
『そりゃぁ、私は見た目は子供頭脳は大人!だし〜。』
っふん、と鼻で息をして、そう言えばおかしそうに笑う3人。
『何で笑うのっ』
「そんな事言って、名前ちゃんは俺達の前ではただの甘えたの癖に〜」
『そんなことないしっ』
からかってくるサブからっふいと顔をそむけた。
すると、また3人がクスクス笑いだす。
えぇいっ、何なんだよ3人ともっ
真実は甘えたおまけ→
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