「三郎ってさ今彼女いたっけ?」



通学路で他愛もない話をしながら歩いていれば耳元に口を寄せて勘右衛門がそんなことを問うてきたからうーん、と首を傾げる

僕の知っている三郎は現在彼女なんていないはずだ。


だけど、勘右衛門が尋ねてくるのだから僕の知らないところで三郎が彼女を作っていたのかもしれない。

いや、でもその場合三郎は真っ先に名前や女に餓えてる八たちに自慢したりするだろうし…



「で、どうなの雷蔵さん!?」

「、僕は彼女なんて聞いてないけどな」



必死の形相で前を歩く三郎たちに聞こえないだろう声で詰め寄ってくる勘右衛門に押されながら答えると だよな、と神妙に頷く勘右衛門

いつになく本気で何か気持ち悪い…



「じゃぁ、最近三郎に女の影とかあった?」



そう聞かれてポンと頭に浮かんだのは隣に住む幼馴染の名前の顔。

昨日も家に泊まったけど……あれは女の影と言ってもいいんだろうか…?



「ん?ん?その顔はあるんでしょ!?あるんだな!?」

「え、あ、いや…そういうんじゃないけど…うーん」

「はけ!はくんだ!雷蔵!!」



僕の肩を両手でつかんで揺さぶってくる勘右衛門



「ちょ、気持ち悪い!!酔う!!話す!!話すから離して!!」



さっき無理矢理胃におさめた朝食がリバースしそうになったので声をあげればそれに気付いた三郎が僕たちの方へ振り返る

何故かその両脇にいる兵助と八は苦虫を噛み潰したような顔をしていて心の中で小首をかしげる



「何の話をしているんだ?」

「いや勘ちゃんが、三郎にか「いやー!何でもないから!何でも!!」

「私に?」



勘ちゃんが不自然に僕の台詞を遮ってきたので鋭い三郎はそれに訝し気に眉をひそめる
勘ちゃんがこんなわかりやすいミスをするなんて珍しい。



「お前たち昨日から変だぞ?」



三郎の言葉に他の2人も気まずそうに視線をそらす
確かに昨日からこの3人の様子はおかしかった



「私たちがコンビニに行っている間に何があった?」



僕たちがコンビニに行っていた間、その時何かが起こったんだ。

僕と三郎で3人を凝視して壁へと追いつめる



「ほら、言え、言うんだ。」

「僕も気になるなぁ…」



ニコリと笑って三郎と一緒に僕も3人を追いつめる

どこで知ったのかこの話には名前も関係しているかもしれない。



「ぅ…さ、三郎が悪いんだ!!」

「八…!」

「お前…!」



追いつめられた八が我慢ならなくなったのか口を開く



「私?」

「三郎が!!三郎があんな物盗んだから…!!」



は?三郎?何?三郎何か盗んだの??

三郎の方を見てみると三郎も訳が分からないのか眉をひそめて八を見ている



「だから!俺達三郎のまわりの女から探そうって…!!」

「そしたら、雷蔵に思い当たる人がいるみたいだし…!!」



八の言葉を補足するように続けた勘ちゃんの言葉に先程の女の影という話を思い出す
だけどそれでもやっぱり話の意味がさっぱりわからない

そして勘ちゃんの言葉に三郎も頭に名前のことが浮かんだのか僕にアイコンタクトを送ってくるのでそれに頷く

その時の三郎の顔を見るかぎりまるで思い当たることがないみたい

だけど勘ちゃんたちの話だと、三郎が何かを盗んでそれは名前に関係あるってこと?



「いや、お前ら何か勘違いしてるみたいだが、私は何も盗んでないぞ」



眉間にしわを寄せて言う三郎にそれもそうだと僕も頷く

まず三郎は犯罪なんて犯さないし、むしろしたとしてもそれをうまく隠すだろうし、一緒に暮らしている僕が気付かないのもおかしい。



「いや、でも俺たちは見たんだ…!!」

「あれが三郎の物だと言う言い訳は通用しないのだ。」



はぁ?と兵助たちの言葉に首を傾げる。

何?もう全然意味わかんないんだけど。



「じゃぁ、お前たちは私の部屋で何を見たっていうんだ?」



三郎の方も痺れを切らしたのか苛々を隠さずに詰め寄る

3人の顔を見ると顔を見合わせて何故か顔を赤くさせている


は?何で赤くなってんの?



「いや、それは…あのぅ…」

「……野外じゃ言いづらいなぁ…」

「…………男のロマン。」



いや兵助、男のロマンってなn……もしかしてエロ本?

いや、でもそれじゃぁ盗んだっていうのがおかしいか。



「何?もう何なの?はっきり言ってよ」



苛々しているのは三郎だけじゃない僕だってそうだ。

それが名前に関係あるかもしれないならなおさら



だけどそこで兵助が口を開くと同時にキーンコーンカーンコーンと予鈴が鳴る



「うわっ!!予鈴!?予鈴なっちゃったよ!!」

「ッチ、この話ははまた後で詳しく聞かせてもらうからな!」



僕たちがいた場所から学校は遠くない距離だったとしても完全に遅刻だ


話を途中で切り上げ僕たちは学校まで全速力でかけた







prev next


- ナノ -