「今日、家に幼馴染来るぞ。」



そう昼休みに告げた三郎にガタガタとイスを揺らす

この一週間通い詰めた三郎たちの家。
そこに遂に待ち望んだ幼馴染ちゃんが来るのだ



「マジで!?ヤッター!!」



万歳してはしゃぐ俺に三郎は冷たい目を向けてくる
よほど俺がしつこく絡んできたたのがウザかったんだろう

今から放課後が楽しみになってくる
ワクワクドキドキと上機嫌に弁当の中身を口に放り込む

そんな俺に雷蔵が「可哀そうだからあんまり期待しすぎないでね。」と言う
それに「わかってるよー」と答えるけどその言葉には全く心はこもっていない

どうして期待せずにいれるだろうか。
これだけ焦らしておいてこれで不細工だったらどうしようという不安もあるがもしかしたら美少女かもしれないと期待もある
まぁ、どっちにしろ身体は俺好みだからばっちしなんだけど。
一種の賭けみたいなものでワクワクが止まらない

隣の「今から緊張してきた……!」と興奮している八左ヱ門はきっと平凡な顔の女の子でも女っていうその性別にだけで興奮できるだろう
反対に兵助は見た目と中身両方を重視してじっくりと品定めしそうだ。

あーあ、早く放課後にならないかな。





遂に待ち望んだ放課後がやってきた

雷蔵に言われて買った食堂のおばちゃんお手製のプリン人数分だけが三郎の部屋のテーブルの上に置かれている

先ほど三郎たちのスマホに届いた一件の"今から行くよー!"という幼馴染ちゃんのLINEの通知にただでさえソワソワした室内の空気が更にソワソワとしてくる

そばでゲーム機を握っていた八左ヱ門のその手にはもうゲーム機はなくなぜか正座してソワソワと身体を動かしている

兵助は見た目はいつも通りに見えるが落ち着かないのかクッションをにぎにぎとしている

三郎は特に気にしていないのかベットで寝転がって雑誌を読んでいる。
その足元でベットに腰掛ける雷蔵はソワソワと落ち着きのない俺たちに苦笑いしながらも本を読んでいる



「ねぇ!まだかな!?」

「まだ」



俺がソワソワしながら言えばそれに即答で三郎が「まだ」と答えるこのやり取りはもうすでに何回も行われている

聞けば幼馴染ちゃんの通っている学校はここから少し遠い婆娑羅高校らしく帰るのにそれなりに時間を使うらしい


そうこうしている内に時間がたち一階からガチャリという音と「お邪魔しまーす」という声が響く

その声にピシリと身体を固まらせる俺ら

三郎は雑誌を顔において寝ていたのを身体を起こしてベットに腰掛ける雷蔵も読んでいた本を閉じる。

雷蔵の本を閉じるパタンという音が静かな部屋にやけに響いた

ドアの外からトントントンと階段を上ってくる音が聞こえる


ドキドキしながら扉が開くのを待つその数秒間がやけに長く感じる。



「入るよー」



ドアの外からこの前電話越しで聞いた声がはっきりと聞こえた。






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