イルミ×郭の少女 (27/27)



客がいないのをいい事にパタパタと
廊下を走るが誰も咎めはしない

今日は月に一度の愛しい人が来る日だ

ピタリと玄関に入る前の廊下で止まり
一呼吸おいて息を整える

深呼吸をして優雅に歩いてきた振りをする

上客を店主自ら恭しく迎え入れている
愛しい人の姿が見えると
本当はすぐにでも抱きついてしまいたい衝動を
なんとか抑え微笑む

「イルミ様、おいでなんし。」

「や、アラタ。」

優しく手を取り歩き出すすぐに部屋へと向かう
はしたないとわかりつつも他の遊女達は
イルミ様を一目見ようと襖を少し開け
こちらの様子を伺っている
そんな遊女達に気がついているであろうが
ちらりとも見てやらない所がイルミ様らしい

「相も変わらず、
皆が貴方を見たいと競っていんす 。」

「ふぅん」

優越感も抱かずにただ歩く
そんなイルミ様を皆は
“顔が綺麗で羽振りもいいし
素敵だけど何を考えているかわからないから怖い” と言う

そんな事はないのだけれどと伝えても
人の馴染みに話しかけるような遊女はここにはいない

娼館が並ぶこの街には珍しいジャポンの遊郭が作られた
遊郭を元に作られているとはいえ忠実に再現されており
禿からきちんと仕込まれたものしかここで働く事はできない
そして禿になるのも器量良しじゃないとなれないのだ

初会・裏・馴染みと3回会わないと床にも入れない
お金もかかるのに客が絶えないのは
質がいいからに他ならないのだろう


「アラタ、おいで」

「はい」

部屋に入るとすぐにイルミ様の膝の上に呼ばれる
16になっても背が小さい私はイルミ様の
膝にすっぽりと収まってしまう

「相変わらずちっさいね」

「16歳になりんした のに背が伸びんせん。
もつとも 身長も伸びて素敵な女性になりたいのに
何故伸びないのでありんしょう ?」

「・・・ねぇ、2人きりだしその言葉遣いしなくていい。」

「あ、つい癖で...ごめんなさい。」

イルミ様は廓言葉が嫌いらしい
それでも日常生活での癖でついつい使ってしまう


私がここで生きていけるのは
家族が殺されて怯えている所を
イルミ様に保護してもらえたからだ

父と母と3人暮らしの平凡で幸せな家庭だった
何故、両親が殺されたのかわからない
一瞬で幸せは壊れた

あの日の記憶は曖昧でどうやって
親が殺されたのか覚えてない
覚えているのは部屋の隅で蹲っている私の前に
イルミ様が現れて優しくだっこしてくれたこと

そして連れてこられたのがここだ
怯える私に優しく話しかけてくれ
「今日からここがお前の家だよ」と言われた

店主は他の禿達よりも何故か優しく丁寧に接してくれていた
禿の間も月に一度会いに来てくれ
床に入り何をするかも学び
とうとう花魁デビューのつきだしの日がきた
ドキドキとしていると通された部屋にいたのはイルミ様だった

「今日からアラタはオレ専属だから」
と告げられたのだ
密かに恋心を抱いていた私は嬉しくて泣いてしまった

イルミ様以外の男性と床入りを覚悟していて
自分にも仕方の無いことだと言い聞かせていたのだ

泣いてる私を咎めずに理由を聞いてく
優しく頭を撫でてくれたのだ

あとから店主に聞いたら
私を売ったのではなくて預けただけだったらしい
それでもすごいお金がかかってるはずだ

「今何考えてるの?」

「ふふ、つきだしの時の事を。
とても嬉しかったんです。
私は死ぬまでイルミ様のものです。」

イルミ様の胸に顔を埋めると
ギュッと抱きしめてくれる
その温もりが嬉しいのだ

「あ、そうだ。
住む場所用意したから
明日ここを出ていくよ」

言葉の意味が理解できなくて
顔をあげイルミ様を見つめた
その顔いつも通りの表情だった

「え、?」

「オレと住みたくない?」

「い、いいえ!
あまりに現実味がなくて・・・
私は本当に、イルミ様と一緒に暮らせるのですか?」

「オレが嘘ついたことある?」

「ない、です!」

涙が頬を伝う

「泣き虫」

そう言って目尻にキスをしてくれた


そして本当にイルミ様は次の日迎えにきて
10年くらした場所と別れた


イルミ様が仕事にいって帰ってくる
それを家で待ち「おかえりなさい」と
言える事が幸せだなんて思わなかった

囲われているだけだとしても、
私はこれからの人生はイルミ様に捧げる


◇◇◇◇◇

「キミってひどいよね◇」

「なにが?」

ヒソカの依頼をこなして
少し遊ぼう◇と気持ち悪く言うヒソカについて
barでお酒を飲んでいた

「アラタちゃんの事だよ」

「なんで?オレが一緒に暮らそうって言ったら
泣くぐらい喜んでたよ。
迎えるのが遅くなったのは可哀想な事をしたと思うけど
14歳じゃアラタを養うのって色々問題あるだろ。」

「・・・キミが親を殺した事だよ◇」

「は?あれは必要だったでしょ。
アラタと血が繋がってる人間なんか
この世にいらない。
アラタにはオレだけでいい。」

「ククク、
イルミ、キミって本当に歪んでる◆」

「オレはまともだよ。
快楽殺人者のヒソカに言われたくない。」

「ひどいな◇」


アラタを見つけた時は
心臓がおかしくなったのかと思った
絶対に手に入れるそう思い
すぐにアラタを迎えにいった

アラタと血が繋がっている
邪魔な男と女の息の根を止めて
何が起きたかわからずに怯えていたアラタを抱き上げる
羽のように軽く震える姿は愛らしかった

あの日からアラタはオレのものだ
絶対に誰にも渡しはしない



モドル


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