愛しの普憫さま!






「で、結局今日はどうするんだっけ?」

こら、マナー違反だよなまえ。
フォークでこちらを指してくるなまえを、フランシスが注意しているのが見える。
そんなフランシスの目の前で、ちゅるるとパスタを吸い込むなまえは懲りていないのだろうか。
ああもう、と焦れったそうに頭を振ったフランシスとは逆の方向から、今度は口の端が拭かれて。

「なまえはお茶目さんやなぁ。まあ、そんなとこも可愛えんやけど!」

きゃああ、アントン愛してる!
腕を広げたアントーニョの胸に飛び込むなまえは相変わらずの馬鹿さ加減だ。
いや、それよりも。

「お前ら、俺にも構えよ!」

テーブルを1つ挟んだ向こう側でキャッキャと楽しそうにしている3人に紙ナプキンを投げつけた。
が、紙であるそれが空気の抵抗に耐えられるはずもなく、ふわりと舞い戻ってきて。
それをしっかりと目撃したなまえが、耐えきれないとでも言うかのように吹き出す。

「ギル、それじゃ意味な…っあはははっ!」
「やめろってなまえ、ギルが可哀想だろ…っぷふ」
「ギルちゃんだって必死だったんやでー。なあギルちゃん?」
「っお前らなぁ!」

によによと笑う3人組を怒鳴る俺に突き刺さる視線に、顔が熱くなるのを感じる。
そりゃあ、休日の朝っぱらからこんなに騒いでいれば視線が集まるだろう。
だからと言って、こんなに俺ばかり…!
勢いよく顔を上げると、そこにもう奴らの姿はなくて。
ドアの前で手を降っているなまえと、テーブルに残ったレシートもどきがやたら印象的だった。




─愛しの普憫さま!─

(ギル愛してる!だから会計よろしくね!)
(じゃ、頼んだよー)
(俺らは外におるからなー)
(ちょっ…待てって!)


2010.02.01



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