つん、と澄ました顔は昨日に比べてかなり不機嫌らしい。 少し先を歩いている彼女の揺れる髪がふわりと風になびくのと同時に、苦笑が浮かんでしまう。
「悪気はないんだって」
だから許してよ。 ずんずんと進んで行く彼女の足は止まることを知らないらしい。 彼女は何も言わないままで、もう少しで家に着いてしまいそうだった。
「なまえ、」
声のボリュームを上げてみる。 思ったよりも低く威圧感があったそれに、彼女の肩がびくりと上がるのがわかった。 それでも止まる様子がない愛しい人の腕を掴む、と、鋭く睨まれた。 これは、相当怒ってるな。
「っ、!」 「…え、」
すごく、ものすごく間抜けな声が出てしまった。 だって、まさかあんなに顔が赤いとは夢にも思わないわけで。 しかも彼女からキスされるだなんて、そんな。
「フランシスが、しつこいから」
あたし、あんたに惚れちゃったじゃん! どうしてくれるの。 ぐい、とYシャツの襟を掴まれて、また唇が触れる。 やたら情熱的で、不器用な愛を向けられて、しばらく動けなかった。
─君のことばっかり─
(つまり、好きって意味だよね?) (そう、だよ) (お兄さん勿論ツンデレも大好きだから!大丈夫!) (ば、馬鹿!フランシスの変態!)
2010.02.01
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