萌えますよね、わかります






「ふぅ…」

疲れましたね。
何故かにやけながら書類に目を通す彼に話しかけると、妙に嬉しそうな表情をしていて(いかがわしいことを考えているに違いありません!)。
嫌な予感がしていても目を逸らせないのは、彼の頬に痛々しいまでに赤くついた手形のせい。

「また、妹さんですか」
「お、よくわかったなー」

お兄さん弱っちゃったよ。
そう言いながらも全く弱っているようには見えないのは、多分その兄妹がものすごく仲がいいからだろう。
正直羨ましい気もしないでもないですが。

「それにしても、」

今回は何があったんですか。
好奇心から言いかけた質問は、カチャリと開いたドアによって消えてしまって。
代わりに、隙間から顔を覗かせたブロンドの髪の少女が慌てたようにまくし立てる。

「その、今日お兄ちゃん誕生日だし、朝ひどいことしちゃったから。だから、」
「大好きなお兄さんとお茶しようか。菊も一緒でいいよな?」
「やったぁ…!」

じゃあ、今お茶持ってくるね!
ぱたぱたと走って出ていった後ろ姿を見送り、ちらりと彼を見やる。
と、

「ちょ…鼻血拭いて下さい!」

さっきまでのきりりとした態度は跡形もなく、鼻の下を伸ばした変態しかいませんでした。




─萌えますよね、わかります─


(三次元でも萌えることってあるんですね)
(何ならお兄さんちに来る?毎日可愛い妹にキスできるよ)
(いえ、フランシスさんのようにはなりたくないので)



2009.11.16 修正

誕生日SSその後。


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