神様仏様、





「っ意味、わかんない…」
「あ?」
「銀時のバカ、出て行って!」
「オイ…!」

バタン、思い切り玄関のドアを閉めると同時に、ずるずるとへたり込む。
さっきまでは必死だったから気づかなかった体の震えに苦笑して、膝を抱えて。

「大好きだよ…バカ、」

怒って帰っちゃったかな。
今さら彼のことを考えるくらいなら、あんなことを言わなければよかったのに。
もう取り返しがつかなくて。
自分でもよくわかるくらいに震えている手に、涙が落ちる。
ぽたり、ぽたり。
その涙の粒を見るだけでも、どうしてか泣けてしまう。
そうして、とうとう涙が止まらなくなってしまって。
唇が紡ぐのは、ただ一つの名前だけ。

「銀、時…っ、」

ただ、彼の名だけを呼び続けていた。
何の意味も、ないのに。

「ごめ、なさっ…」

奇跡なんてもの、起こるはずがないのに。
いつもは信じることもない神様に祈って。

「好きな、のに、言え、なく、って…!」

泣きじゃくって自分の気持ちを言った頃。

「俺だって好きですぅ」

なんて、愛しい声が空気を震わせたから。
ドアを思い切り開けて、彼に飛びついた。




─神様仏様、─

あたしは今、すごく幸せです。


(銀時っ!…あ、れ?)
(ちょ、この展開でドア開けるか普通)
(開けるよ!)
(はいはい。ったく、痛ぇなー)
(あ、ぶつかったの?)


2008.12.14

2010.03.10 修正


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