寒さなんて知るか





「銀ちゃん、雪だって!」

外行こうよ。
この寒い季節に、あまりにも元気な声が万事屋に響く。
暖かい土地にいた彼女にとって雪は珍しいものなのか、キラキラと目を輝かせていて。
その姿に、仕方がないと苦笑しながら外に出たわけなのだが。

「寒いよ…」
「あのな、コートだけってお前…」

この寒いのに何考えてんだよ。
そう言ってやれば、彼女は困ったように笑って。

「じゃ、銀ちゃんの手袋貸して?」

くいくいと腕を掴んでせがんでくる。
だけど、俺だって寒いわけで。
渋々片方の手袋を渡すと、彼女はもう片方の手を俺のポケットに突っ込んできた。

「おま、なまえ!」
「…あ、あったかい、」

そう言ったかと思えば、にっこりと笑って俺を見上げてくるから。
このクソ寒いのに俺の心臓は元気に跳ね上がってしまう。

「…なァ、」

ちゅー、しようか。
お返しにと耳元で囁いてやれば、耳まで真っ赤になった彼女に"ばか"と小さく言われた。




─寒さなんて知るか─


(ぎ、銀ちゃん!今日はもう帰ろうか)
(え、なんで)
(だってみんな見てるもん!)
(仕方ねーだろ、こんなにお似合いなカップルなんて、なかなかいねーんだから)


2008.11.24

2010.03.10 修正
月愛さんへ!


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