鈍色の天を見上げて





ポツリ、足元を見ていた私の靴に当たった雨粒に空を見上げると、どんよりと曇っていて。
雨が降りそうだ、
と鞄の中から折り畳みの傘を取り出す。

「…ん?」

何だろう。
傘を取り出すときに目についた箱を覗き込むと、少し灰色がかった毛の猫が一匹。
赤い瞳を私に向けて、小さく鳴く。

「…どうしたの?」
「にゃー…」

赤く、綺麗な瞳としばらく見つめ合い、私はその猫を抱えてみた。

「君、うちに来る?」
「にゃあ、」

なんだかベタなドラマのワンシーンみたい、
なんて思って苦笑し、家に帰って。
その猫と一緒にお風呂に入る。
ゆっくりと灰色の体を洗うと、それが本当は白であったことがわかって。
共にはしゃいで湯船に入っていたとき、それは起こった。
ぼふっ!
という漫画チックな効果音と共に現れたのは。

「…あ、」
「ひ、ひゃあぁぁ!?」

銀色の髪に、赤い瞳の男性。
彼は、ばつが悪そうに目を逸らしちょっぴり低めの声で私に言う。

「俺、ちょっと出るわ」
「え?まままま待って!」

当然、互いに裸なわけで。
まずは私が上がって、バスタオルを持ってくることに。

「あ…どーもな、」
「い、いいえ…」

さっきのことがあって、彼と目が合わせられない。
猫、猫なのに、どうして…
そう考えていると、突然覗き込まれる顔。

「あのよ、」

願い事とか、あるか?
少し頬赤らめる彼に、私は小さく願いを伝えた。




─鈍色の天を見上げて─
あなたに出会えて、よかった。


(これからも、一緒にいて下さい)
(その願い、俺も同じなんだけど)
(え?)
(いや、その…なんでもない)


2008.09.07

2010.03.10 修正
友美へ!


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