さるとりいばら
「あー、わかったわかった」
高杉の話ならヅラにでもしとけよ。
今日も当然のように万事屋で高杉のことを話し出す彼女を適当にあしらう。
どうも、コイツの口から高杉の名が出ることが嫌でならない。
何故か、無性にイライラしているのだが。
「…銀時、聞いてる?」
ちょっと、
なんて言いながら俺の着物の裾を引っ張ってくる彼女は、何も気づいていない様子。
ああ、何でコイツはこんなに鈍感なんだ、と心の中で嘆いて。
ぐい、と顎を掴んで上に向かせる。
と、彼女はやっと俺の不機嫌さに気づいたようで。
「えっと…ごめん、ね」
だなんて、困ったような表情で謝ってくる。
その仕草は、その辺の女なんか比じゃないくらいに愛らしいと思う。
「別に、気にしてねーよ」
「えー、嘘だ」
ホントだって、
嘘でしょ、
何とも下らない争いの中不機嫌な理由を小さく告げると、彼女は顔を真っ赤に染め上げて俺を見た。
─さるとりいばら─
花言葉は、元気になる。
(お前が楽しそうに高杉の話してんのが気に食わねーの)
(銀時…それってヤキモチ?)
(ばっ…知らねーよ!ただ高杉が気に食わねーだけだ)
(ありがとね、妬いてくれて)
2008.08.25
2010.03.10 修正
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