ラベンダー
「なぁ、」
お前、帰んねーの?
もう放課後の教室には誰もいないというのに、未だ自分の席に突っ伏している彼女に声をかける。
多分寝ているのであろう。
すうすうと安らかに寝息をたてる彼女の頬をつつくと、僅かに眉を寄せていて。
「…相変わらずだな、」
無防備すぎる行動も、何もかもが変わっていない。
変わったことと言えば、俺がこいつを見る目だけで。
きっとこいつは、このことには気づいていないだろうな。
そう思いながら、彼女の髪を撫でた。
「……なまえ」
いつからだろう。
自分の彼女への気持ちが、"クラスメート"から"好きな女"に変わったのは。
いつの間にか、傍にいるのが当然になってしまって。
自分でさえ、この感情に気づいたのは最近だったから。
「気づいてるわけ、ねーよな」
なまえ、帰んぞ。
すやすやと眠る彼女の鼻をつまみ、無理やり起こしてやる。
「ほら、急げよ?」
そう言って彼女の手を引いて。
まだ寝ぼけ眼のそいつを教室の外へと連れ出した。
─ラベンダー─
花言葉は、答えをください。
(想いを伝えるまでの、もう少しの間だけ)
(この温もりに甘えさせてもらおうと思う)
(…いつかきっと、気づかせてみせるからな?)
2008.08.16
2010.03.10 修正
竅嘉へ!
キリリク。
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