風紀委員長×会長
エイプリルフール小話
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「…あー最悪だ…」
 
 
そう呟いたのはこの学園の生徒会長の笹堵望である。
 
何が最悪なのかと言うと、望の部屋の水道管が破裂してしまい、修理が終わるまで他の部屋に移動しなければならないのだ。
 
 
「しかもよりによってアイツの部屋かよ…どんな顔して会えばいいのかわかんないし。」
 
 
移動の部屋の前に着いた望は、インターホンを押すかどうか躊躇っている。
 
 
「あー!悩む必要なんて無いだろ俺!」
 
「どうしたんだおチビちゃん?」
 
「うわあ!」
 
 
その部屋の主は黒滝龍斗、この学園の風紀委員長である。
 
 
「何でもねぇっての!」
 
「理事長から話は聞いている。災難だったな、まぁ、いいから入れ。」
 
「…おじゃまします。」
 
 
望を招き入れた龍斗は紅茶を出す。砂糖たっぷりの。
 
 
「そういや、理事長がまた製菓会社作ったらしいな。記念に役持ちには一年分の菓子が配られるらしいな。」
 
「本当か!?やったー!」
 
 
無類の甘い物好きの望は目を輝かせる。
それを見た龍斗は意地の悪い笑みを浮かべ、こう言った。
 
 
「嘘だけどな。今日は何の日か知ってるか?」
 
「…くそー!エイプリルフールかよ!」
 
 
四月一日、俗に言うエイプリルフール。
その事を忘れて見事に騙された望に龍斗は満足そうな顔をした。
 
 
「お前なんてもう一生信じないし!最悪!」
 
「悪い悪い。お詫びにチョコケーキがあるんだが、食べるか?」
 
「しょうがないから食べてやる!」
 
「はいはい。どうぞ。」
 
 
口では偉そうな事を言う望だが、チョコケーキを前にして満面の笑みを浮かべている。
 
 
 
 
 
 
 
 
その後、授業やら仕事の話をすれば時間は経つというもので。
 
日も暮れてきたのでそれぞれ風呂に入ることにした。
今は望が風呂を済ませ、龍斗が入っている所だ。
 
一人部屋にいる望の表情は何処か固くなり、何かを真剣に考えているようだ。
 
 
「…エイプリルフールだから大丈夫だ。今日だけだし、チャンスは。」
 
 
望は決心したような、けれど悲しそうな表情でそう呟いたのだった。
 
 
 

 
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