会長×不良(無気力)
 
 
 
 
 
 
 
 
初めてアイツの事を知った時はただ単に馬鹿だと思った。
学校一喧嘩の強い不良。しかも一匹狼。
学生の時はまだいいが、社会人になった時にどうする。ある程度人望があった方がいいだろう。
たとえ喧嘩が強くても、俺にはタダをこねているガキにしか見えなかった。
 
 
しかし初めてこの目でアイツを見た時、それは見事に覆された。
 
 
その日俺は職員室の帰りで、生徒会室への近道になる中庭を通っていた。
アイツはその中庭のベンチで寝ていた。
俺が近づく気配を感じたのか、パチッと目を開けた。
目が合うだけで殴られる、なんて噂されてたから、俺も空手をやっていたが痛いのは嫌なので軽く構えた。
でもアイツは俺を一瞥するだけで、すぐに眠りの体勢にはいった。
 
俺が会長だからか?と頭に疑問符を浮かべながらアイツの傍に近づいた。
 
「郷中 智樹(サトナカ トモキ)だな?」
 
そして俺はアイツに声をかけた。しかしアイツは頷くだけで声を発しなかった。
 
「もうすぐ授業が始まるだろう。こんな所で何をしている、早く教室に戻れ。」
 
「アンタもだろ。」
 
「俺は授業免除があるから大丈夫なんだ。」
 
「授業免除とかあんの。ていうかアンタ誰?」
 
アイツは俺を知らなかった。生徒会長として一応名は通っていると思ってたんだが。
 
「へぇ、守代 裕也(モリシロ ユウヤ)、生徒会長さんねぇ。聞いたこと有る気もするけど。」
 
 
それから本当のアイツ、智樹の事を知った。
実はころころ変わる派手な髪色は美容師見習いの従兄弟が勝手に染めたもので、その髪の所為でやってくる不良を殴り返していたら、今のように言われるようになったとか。
智樹は何といっても無気力で、面倒くさがりだった。
 
俺は智樹が気に入り、アイツは多分流れに任せているだけだろうが、俺達は昼飯を共に食べるようになったり、互いの寮の部屋を行き来する仲になった。
 
そのうちに俺は智樹を俺だけのものにしたいと思った。それが恋だということは後から気付いた。


そして今、俺にとってあまり良くない事態になっている。
 
「智くん、お菓子あるんだー!食べない?」
 
生徒会会計が何があったのかわからないが、アイツに惚れたらしい。
 
「甘いもの好きなんですか?こっちにクッキーありますよ?」
 
と恋愛感情かどうかわからないが、副会長までアイツにちょっかいをかけている。
 
アイツといえば、別段気にする様子もなく、餌付けされてたりする。
俺に対する様子とあいつらに対する様子は何一つ変わらない。いや、むしろ負けてんじゃないのか?これは…。
 
そんな事を考えるようになり、最近は随分ネガティブ思考になってしまったみたいだ。

アイツは人になんて関心を持たないから、きっと俺のことも興味ないんだろうな。
 
俺は副会長や会計みたいに線の細い体つきもしてないし、アイツも恋人にするならあいつらの方がいいだろう。
 
 
前に女は居るのかと聞いた事がある。
 
「彼女?…恋愛とか面倒くさい。」
 
などと言っていた。
好意を寄せられる事自体、面倒なのだろう。
 
少し、アイツから離れてみた方がいいのかもしれないな。









TOP
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -