支度をしようと洗面所の鏡を見て、ひどく目が腫れていることに気づいた。
幸い今日は授業もバイトもないし、ゆっくり目を冷やせばいいか。
本当に今日、授業無くて良かった。勇太の顔まともに見れる自信無いもん。
 
 
「終わっちゃったんだよね…。」
 
そう声に出してみると余計に悲しくて、また涙が出てきそうになった。
その思いを振り切るため、お風呂に入ることにした。
 
 
 
 
 
 
しばらくしてお風呂からあがると、ふと携帯が目に入った。
 
 
勇太から連絡、きてるわけないよね。きてたらちょっとは僕のこと気に掛けてくれてたんだ、って思えるけど、きてなかったら…。
 
 
そう思うと怖くて携帯を見ることが出来なかった。電源は昨日の夜から切ったまま。
 
 
 
突然、インターホンが鳴った。
 
 
「はーい。」
 
 
ドアを開けて見てみると、勇太が居た。
あわててドアを閉めようとしたけど、ガッと足を入れられて家の中に入られてしまった。
 
 
「…おい。」
 
怖くて勇太と目を合わせることが出来なくて、足元を見ることしか出来ない。
 
「おい、何だよあれ。しかもお前何で携帯出ねぇの。」
 
少し怒ったような声で勇太が言った。
 
「何で黙ってんの。何か言えば?そんなに俺と別れたいわけ?」
 
勇太の声が少し冷たくなったような気がした。
 
僕はその声に耐えきれなくなって、
 
「別れたいのはそっちじゃん!僕とはいつも一緒に出かけてくれないのに、昨日綺麗な女の子と居たじゃん!俺と並んで歩くの嫌なんでしょ?俺のこと迷惑なんでしょ?だったら別れたほうがすっきりするでしょ!」
 
きっと声が震えているだろう。でももう押さえられないんだ。
 
「別に別れたいとか一言も言ってねぇし。昨日居たのは従姉妹だし。」
 
そんな嘘つかなくていいよ。変なとこで優しさなんて見せないでよ。
 
「そんなの信じられないよ。だって好きとか僕に言ったことないし、恋人らしいことしたことないじゃん!僕のことなんて好きじゃないんでしょ…!」
 
まだ顔を上げられずに下向いていると、ふと勇太が近づく気配がした。
いつまでも俯いてられないと顔を上げてみると、真剣な目をした勇太と視線が交わった。
 
 
「好きだ。」
 
 
息が詰まるかと思った。初めての勇太からの告白。でも、
 
「今までそんなこと一言も言ったことないじゃん!」
 
「お前だって言ったことないだろ。」
 
 
…え、そうだっけ?
 
「はぁ、ばかやろう…」
 
きょとんとした顔で見ていると勇太がそう呟いた。
 
「で、でも昨日の女の子は…?」
 
「だから従姉妹だって言ってんじゃん。5年ぶりに日本に帰ってきたけど、またすぐ戻るから昨日くらいしか日にち合わなかったんだよ。」
 
「え、ほんとに…?」
 
はぁ、とため息をつかれて肩が揺れた。
 
「で?俺に言う事は?」
 
「…ごめんなさい。」
 
僕がそう言うと勇太は優しく微笑んで、僕に近づいてきた。
 
「尚也、」
 
そして顔と顔の距離がだんだん縮んできて、唇にあたたかいものが触れた。
 
「で、もう一つ言う事は?」
 
「…好きです。」
 
僕たちはどちらとともなく笑いあって、馬鹿だねって言いあった。
 
初めて幸せ感じた気分だ。
 
 
 
「そういや何でずっとキスしてくれなかったの?」
 
「尚也が好きって言ったらしてやろうと思ってた。」
 
「…」




 

「あ、今度の満月の夜は2人で散歩しようね。」
 
「ああ。」


僕たちの幸せはこれからです。














 


 
 







クーデレ?





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