クーデレ×健気
満月の夜はいつも思い出す、あなたと僕の始まりを。
「勇太、明日映画見に行こうよ!」
「別に見たい映画とかないし。」
「えー、じゃあご飯食べに行こうよー。」
「家で作ったほうがいい。」
「うーん、じゃあ明日は家でゴロゴロね!」
「ん。」
勇太はいつも僕と出かけない。何故だか分からないけど、嫌われたくないから勇太に従うんだ。
始まりは満月の夜。
大学のサークルが一緒で、僕はずっとあなたを見てた。
サークルの飲み会で遅くなった帰り道、満月を見たあなたは綺麗だねって笑ったんだ。
その時僕はあなたの笑顔を独り占めしたくてついつい言っちゃったんだ。
「あ、あの!僕、ずっと勇太くんの事好きで、あの、良かったら…良かったら、付き合ってください!」
そしたらあなたは少しびっくりした後小さく笑って
「ん。いいよ。」
って言ったんだ。
それからもうすぐ半年。でも勇太と出かけた事は数えるほどしかない。
デートと呼べるものなんてものじゃなかった。ましてやキスなんてしたこともない。
これ、ほんとに付き合ってるって言えるのかなぁ?
そういや、一度も好きって言われたこともないなぁ。
勇太、僕の事面白がってたのかな…。
そんな事を考えてたらいつの間にか朝になってることもしばしばで。
だから最近睡眠不足なんだよね、なんか寝られなくなってきたし。
今日は1コマ目から勇太と一緒だし、しゃんとしないとね。
そう思いながら大学に向かっていると駅で勇太と遭遇した。
「勇太!おはよう。」
「…はよ。」
「相変わらず低血圧だね。」
ささいな会話をしながら歩いていたら大学についたようだ。
「あ、ねぇ勇太。今度の日曜空いてる?どっか行こうよ。」
「無理だわ。予定あるし。」
「…そっか。また今度ね!」
その日は勇太のバイトがあるから午前中で別れた。
日曜、ひとりぼっちだな。恋人が居るのに寂しいね。
日曜、僕は買い物に来ていた。ついでにDVDでも借りて家で見よう。
そう思い、店をふらふらしていると聞き慣れた声が聞こえた。
ふと声のする方へ視線をむけて見ると勇太だった。
ちょっと嬉しくて声を掛けようと一歩踏み出してみると、横には可愛い女の子がいた。
勇太はその女の子に僕には見せたことのないような笑顔で優しく笑いかけて、髪についたゴミを取ってあげていた。
なんだ、彼女いるんじゃん。そりゃ男の僕よりふわふわした可愛い女の子の方が断然良いもんね。
やっぱり僕の事は興味なかったんだね。
悲しくて、僕はその場から逃げた。
気がついたら家に居て、手に持っていた携帯のアドレス帳は勇太のページを開いていた。
そうだよね。彼女がいるんだったら別れのメール送らなきゃ。
今まで付き合わせてごめんねって。今までありがとうねって。
でもどうしても送信ボタンを押せなくて、指が震える。
でも、送らなきゃね。勇太にこれ以上迷惑かけられないから。
ごめんね勇太。幸せにね。
震える指で送信ボタンを押した後涙がいきなり溢れだして、止まってくれなかった。
気がついたら朝で、いつの間にか泣き疲れて眠っちゃったみたい。
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