2
「ちょ、トキヤ…ッ」
「いい加減、観念しなさい、音也」
「ひゃ…っ」
頬に柔らかな手の平の感触を感じて、至近距離で顔を覗き込まれる。取り繕う間もなく、触れられた頬が熱くなった。
「貴方は私が欲しかったんでしょう?…ならば、素直に私を受け入れて下さい」
「だから、それはトキヤの――んん……っ!?」
勘違いなのだ、と告げる前に唇を塞がれた。刹那に瞠った瞳は、口づけの余りの心地良さに瞼が重くなってくる。
こんなこと、自分は――。
逃げる音也の舌を、トキヤの舌が追い掛け、いつしか搦め取られ、蹂躙されてしまう。
「んぅ、ン、…んん」
濃厚な口づけの連続に、頭が霞み、体力が奪われていく。僅かな抵抗さえも、沸き上がる快楽に飲み込まれていく。不意に羽織っていたパーカーを脱がされて。腰を引き寄せられて、更に二人の境界線が薄くなった。口腔を掻き回され、最早、思考回路はショート寸前だった。
何もかも目の前の人に身を任せてしまいたくなりかけた頃、漸く、唇を解放される。
「…も、もう、俺、お腹いっぱいだから」
唇を手の甲で拭い、気恥ずかしさから顔を背ける。身体を捩り、相手の腕の中から逃れようとするけれど、まだ彼からの贈り物は終わっていなかったようで…。
「まだですよ。本当は貴方も満足してないのでしょう?」
「お、俺はもう十分だから。だから、もう離れろって…、うわっ」
両の腕を伸ばしてトキヤを突き放そうとしたが、逆に腕を掴まれ、そのままベッドの上に押し倒されてしまう。
「…素直になりなさい、音也」
「トキ…ヤ――んん、ん、んー……っ」
再び唇を塞がれて、反論を封じられた。先程より甘やかで執拗なキスに、あっという間に支配される。身体のあちこちを撫で回され、小さな焔を燈されていく。快楽に従順な自分の肢体は、思いとは裏腹に、その反応を如実に示してしまう。
「ぁん、ん、ん……っ」
これ以上はダメだ。これ以上されたら、どうにかなってしまいそうだった。何とかかして、口づけだけで終わりにしなくては…っ。
相手に身体の変化を感づくかれぬうちに離れたかったというのに、唇が解けた瞬間、中心をやんわりと握り込まれてしまった。
「あぁ……っ」
喉の奥から自分のものとは思えない高い声が漏れて…。直ぐに口を噤んだけれど、時は既に遅かった。反応を示した音也を見て、トキヤは嬉しいそうに小さく笑った。
「やはり、貴方もその気があるのですね」
「これは違…―――あ、ぁん……ッ」
相手の手の内にあるそれを緩く揉みしだかれ、あっという間に張り詰めた。その指遣いは巧みで、直ぐに音也は息が上がってしまう。
「あ、ぁ…っ、…イ…ヤ…だって、こんな…っ」
「駄目ですよ、音也。貴方は何もしてはいけません」
自分ばかり乱れるのは、と思い、トキヤの下肢に手を伸ばそうとしたら、指先が触れる寸前で阻まれてしまった。
「今日は貴方が十分に満たされるまで、私がして差し上げましょう。その足腰が立たなくなるまでね。――音也、貴方はただ、何時ものように乱れ、快楽に身を委ねていれば良いのです」
「……ッ」
驚愕する音也に、トキヤは優しいキスを落としてくる。
「誕生日、おめでとうございます。音也…」
Tシャツの裾をたくし上げられ、それと一緒に、トキヤの少し冷たい指先がすーっと素肌をなぞっていく。
音也は目の前の愛しい存在が与えてくる快楽に、ただ身を任せ、溺れていく他無かったのであった――。
- 2/2 -